親が認知症かもしれないんだけど、どこの病院の何科に連れて行けばいいのかな?
このように
- 認知症の方をどこの病院に連れて行けばいいか知りたい
- 認知症の診断の流れが知りたい
- 親が認知症になったかもしれないので心配している
など上記の方々はこの記事を読むことで解決できます。
この記事では、認知症になったらどこの病院・何科に受診すればいい?、病院へ行く前に持参するもの、認知症の診断方法・診察の流れ、認知症の診察を受ける時の注意点、などについてわかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
認知症になったらどこの病院・何科に受診すればいい?
自分の親やご自身が認知症の可能性があると思ったとき、どこの病院の何科にかかれば良いのか?についてですが、ここでは2通りの方法をご紹介します。
①かかりつけ医に相談する
現在、ご自身またはご両親が病院に掛かっている場合、今までの体の状態を理解している「かかりつけ医」に診てもらうのが一番です。
かかりつけ医には
- 最近物忘れが多い
- うつ状態である
- 不安が強いことがある
- 場所がわからないことがある
- 以前よりも怒りっぽい
など、具体的な症状を伝えましょう。
かかりつけ医がその情報をもとに認知症専門の病院を探して紹介状をくれますので、紹介してくれた病院へ行きましょう。
かかりつけ医から紹介される病院へ行くメリット・デメリットは以下の通りです。
- 自分で探す手間が省ける
- 紹介状を書いてもらうので初診料が安くなる
- 次の病院に今まで飲んでる薬を伝える手間が省ける
- あまり評判が良くない病院を紹介される恐れがある
②認知症専門外来に相談する
自分で認知症専門外来を探して受診をします。
認知症の疑いがある場合は、認知症の専門医がいる「もの忘れ外来」にかかることをおすすめします。日本認知症学会や日本老年精神医学会の認知症専門医が認知症かどうか詳しく適切な診察をしてくれます。
また、近くにもの忘れ外来の病院が無い場合は、病状に合わせて以下の診療科を受診してください。
- もの忘れ外来(まずはこちらに外来しましょう)
- 神経科
- 神経内科
- 心療内科
- 精神科
- 老年科
- 脳神経外科
病院へ行く前に持参するもの
病院へ行ってから困ることがないように、認知症専門外来へ行く前に持って行くべきものをまとめましたので、忘れずに持って行きましょう。
- 本人の状態をまとめた情報メモ
- お薬手帳
- 保険証
- お金
本人の状態をまとめた情報メモについては、受信時にきちんと伝えるために必要です。
以下のようなことを書いておくと良いでしょう。
- 気になる症状
- いつから出始めたか
- 症状が出始めたきっかけ(事故や病気など)
- これまでに進行・悪化した様子の有無
- 現在治療中の病気
- 現在までの病歴
- 服用中のお薬
- 家族として心配していること
これらは問診時に聞かれることでもありますので、詳しく書いておきましょう。
認知症の診断方法・診察の流れ
ここでは、認知症専門外来にかかったときの診断の流れを解説します。
【1】問診
まず、認知症の症状を見極めるために診察を行います。
問診では認知症の疑いがあるご本人またはご家族に、現在までの生活状況や病歴、性格などを聞き、記憶力、認知力を会話の中から正確に把握していきます。
問診では以下のことを聞かれます。
- 認知症を疑う症状
- いつ頃から気になりましたか
- どのように経過していますか
- 当てはまる症状をチェックする
・記憶力の低下
・道に迷う
・気分の落ち込みがある
・怒りっぽくなった
・言葉がスムーズに話せない、、、など - 現在治療中の病気
- 現在までの病歴
- 現在服用している薬
- 現在の生活習慣
- 家族構成
- 家族の中に認知症の方はいますか
気になることはその都度、メモを取り、メモが難しい場合はスマホなどで録音をしておきましょう。
【2】身体検査
血液検査、尿検査、心電図、胸部X線などにて身体的疾患の有無を調べます。
- 血液検査
甲状腺ホルモンから甲状腺機能低下、ビタミンB群の欠乏、梅毒血清反応などを調べます。 - 尿検査
尿の中にある特殊なたんぱく質を検出して認知症の診断を行います。 - 心電図
不整脈、狭心症、心筋梗塞などを調べます。 - 胸部X線
心臓の大きさ、肺の異常を調べます。
【3】神経心理学検査
神経心理学検査では、簡単なテストによって認知機能をスクリーニングすることができます。
長谷川式認知症スケール(HDS-R)
長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、紙、筆記用具、道具を用いて簡易的に認知機能の低下を調べることができる検査です。
30点満点中、20点以下で認知症の可能性が高いことがわかり、点数がより低くなればなるほど可能性が高まる仕組みです。
MMSE(ミニメンタルステート検査)
MMSE(ミニメンタルステート検査)は、紙、筆記用具、道具を用いて簡易的に認知機能の低下を調べることができる検査です。
30点満点中、23点以下で認知症の可能性が高いことがわかり、点数がより低くなればなるほど可能性が高まる仕組みです。
Mini-Cog(ミニコグ)
Mini-Cog(ミニコグ)は、紙、筆記用具、を用いて簡易的に認知機能の低下を調べることができる検査です。
5点満点中、2点以下で認知症の可能性が高いことがわかり、点数がより低くなればなるほど可能性が高まる仕組みです。
MoCA-J
MoCA-Jは、紙、筆記用具、を用いて簡易的に認知機能の低下を調べることができる検査です。
30点満点中、25点以下で認知症の可能性が高いことがわかり、点数がより低くなればなるほど可能性が高まる仕組みです。
DASC-21
DASC-21は、紙、筆記用具、を用いて簡易的に認知機能の低下を調べることができる検査です。
84点満点中、31点以上で認知症の可能性が高いことがわかり、点数がより高くなればなるほど可能性が高まる仕組みです。
時計描画テスト(CDT)
時計描画テスト(CDT)は、時計の絵を描く検査です。
外円の大きさ、数字・針・中心点の位置、を正しく描けていないと、認知機能が低いことがわかる仕組みです。
ABC認知症スケール
評価者が介護者に日常生活動作・行動心理症状・認知機能についての質問をしていく検査です。
13項目の質問から9段階(1点~9点)で評価します。質問が具体的で具体例の挿絵もあり、わかりやすいです。
【4】脳画像検査
【4-1】形態画像診断
形態画像診断とは、脳の形を調べる検査になります。
- CT検査
放射線を利用しエックス線を体の周囲に当てて体の断面画像を撮ります。脳の萎縮を調べることができます。約5分~15分 - MRI検査
磁石と電波を使い磁場を発生させた筒の中で体の断面画像を撮ります。脳の萎縮を調べることができます。約30分
CT検査、MRI検査によって、認知症に起因する「硬膜外血腫」「水頭症」「脳腫瘍」「脳出血」「脳梗塞」などがわかります。
【4-2】機能画像診断
機能画像診断とは、脳の機能を調べる検査になります。
- SPECT検査
少量の放射線入り薬剤を注射し、体内の放射線を検知し画像化します。脳の血流低下の状態を調べることができます。約30分 - アミロイドPET検査
放射性薬剤を注射し、脳内の異常蛋白を画像化します。約20分 - DATスキャン検査
ダットスキャン静注を用いて、脳内のドパミントランスポーターを画像化します。約30分
参考 DATスキャン検査とは
SPECT査、アミロイドPET査、ダットスキャン査、によって、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などがわかります。
【5】髄液検査
くも膜下出血の疑いがありCT、MRIではわからない場合、背中から脊髄液を採取して調べます。
ベッドに横向きで体を丸めて寝てもらい、背骨の間へ注射し脳髄液を採取し、たんぱく質、細胞数などを検査します。
【6】診断
各種、検査の結果が出ましたら、医師がそれらの情報をもと総合的に診断を行います。
認知症が疑われる、認知症の治療が必要と判断した場合は、今後の治療方針についての説明があります。
その病院にて継続して治療を行えない場合は、近くの医療機関を紹介してくれます。
介護サービスが必要な場合は、地域包括支援センターを紹介してくれます。
認知症の診察を受ける時の注意点
家族が認知症の診察を受ける時に注意しておきたいことをまとめました。
①いつもの生活をメモする
本人が普段どのように生活しているのかをまとめてメモしておくことで診察の時、医師も助かりますし、判断材料になります。
具体的には以下のことをメモしておきましょう。
- 気になる症状
- いつから出始めたか
- 症状が出始めたきっかけ(事故や病気など)
- これまでに進行・悪化した様子の有無
- 現在治療中の病気
- 現在までの病歴
- 服用中のお薬
- 家族として心配していること
②認知症でも悲観しない
認知症と聞くとネガティブな印象を受けがちですが、たとえ認知症の診断が出たとしても、家族は決して悲観したり落ち込んだりせず、温かい気持ちで今まで通りに本人に接しましょう。
おそらく本人が一番落ち込んでいると思いますので、不安を抱えないように、笑顔でおだやかにゆっくりとした口調で「先生がちゃんと治療してくれるから大丈夫だよ」と伝えましょう。
③不安な場合は「セカンドオピニオン」を利用する
今までのような一方的な診断や治療ではなく、あくまでも患者本人や家族が治療方法を決める「インフォームド・コンセント」(説明責任と同意)という考えがあります。
医療の進歩とともにたくさんの治療法があり、
- 病気に対する考え方
- 治療法の違い
- 医療技術
などにも差があります。
家族が認知症と診断され、家族も不安を抱え治療を進めるうえで大切なのは医師との信頼関係です。しかし、診断の結果や今後の治療法に不安や迷いがあるときには、「セカンドオピニオン」として複数の他の専門の医師に意見を聞くなど相談してみましょう。
患者本人が治療法などについて、現在診療を受けている担当医師だけでなく、ほかの医療機関の医師に「第2の意見」を求めることができるシステムです。
おわりに
何かおかしいと思っても、本人が病院に行くことを拒んだり受診することを嫌がったり、受診するまで時間がかかってしまい進行してしまうケースが多くあります。
無理やり連れていくのは困難で、認知症だと認めたくない気持ちがあり、自分はおかしくない、必要ないと余計に反発を招きます。診察を受ける前に医師に相談して、本人が納得して受診できるような工夫も大切です。