1965年8月理学療法士及び作業療法士法が施行されました。理学療法士の定義は、
厚生労働大臣の免許を受けて、当名称を用いて、医師の指示のもと「理学療法」を行うことを業とする者をいう。
とされており、翌年1966年に183名もの理学療法士が誕生しました。
理学療法士の仕事内容
理学療法士とは国家資格の一つで、通称PT(Physical Therapist)フィジカル・セラピストと呼ばれています。
医療従事者として作業療法士や言語聴覚士などの人たちと一緒に身体の基本的な機能を回復できるようなリハビリを行います。具体的には病気・ケガ・寝たきりといった問題を心身に抱えている人たちの機能回復と維持をはかります。
「立ち上がる」「起き上がる」「寝返りをうつ」「歩く」「座る」など自分らしく生活できるように運動療法や物理療法にて支援活動を行う医学的リハビリ―テーションの仕事になります。
具体的な対象者は以下になります。
- 中枢神経疾患(脳血管障害、パーキンソン病など)
- 整形外科疾患(変形性関節症、腰痛症など)
- 呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患、肺炎など)
- 心疾患(心筋梗塞、狭心症など)
- 小児疾患(脳性麻痺、先天性股関節脱臼など)
- スポーツ傷害(スポーツ外傷・障害など)
- 内科的疾患、体力低下(糖尿病、高齢、術後体力低下など)
介護・福祉・医療・スポーツなど
これは介護における現場以外でも活躍の場があり、スポーツ選手が骨折などの負傷をした場合の現場復帰のサポートを行うのもこの理学療法士であるパターンが多いのです。むしろこちらのスポーツリハビリのイメージのほうが強い人が多いかもしれませんね。
中にはスポーツチームの専属となってトップアスリートのトレーナーとなって活躍している人もいます。
また、生活を行う上でのリハビリの他に、医学的・社会的視点から生活環境や身体能力を把握して一人一人に合わせたプログラムを作ることも仕事の一環となりますので、幅広く活躍していける資格となるでしょう。
理学療法士の将来性
非常に人気がある資格
超高齢化社会が目前に迫り、リハビリが必要となる人も間違いなく増え続けるため、ある程度は将来性が明るい資格であることが予想されています。どうしても歯切れが悪くなってしまうのは理学療法士が注目され過ぎてしまっている面です。
理学療法士は非常に人気がある国家資格であるため、年々、資格取得者が増加しており、働き口が被ってしまい結果的に就職・転職が厳しくなることも予想されます。
資格を取得するなら早めに行うか、また他の資格を合わせて取得する、例えば「理学療法士+介護職員初任者研修」といった具合にオリジナリティを出すことで企業側からすると、他の人と一味違った好印象を与える資格保有者になります。
今から数年後の未来で、将来的にこの理学療法士になりたいと思った方は、転職支援サイトでどの程度の求人数があるのかを確認したほうがいいでしょう。
理学療法士の就職先
理学療法士にはどのような働き先があるかというと、
- 医療機関(総合病院、リハビリテーションセンター、診療所など)
- 介護施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設など)
- 保健施設(保健所、保健センターなど)
- 福祉施設(児童福祉施設など)
- 身体障害者施設(重症心身障害児施設 障害者更生施設など)
- スポーツ(スポーツトレーナー、フィットネス施設など)
- 在宅介護(デイサービス、訪問介護ステーションなど)
- 行政(市・区役所)
- 小学校・中学校(特別支援学級)
介護だけでなく医療・福祉・スポーツ分野など多肢にわたり幅広く活躍することができるでしょう。
医療・介護のほうに進む方は、主に病院・クリニック・介護保険関連施設等で働くことになるでしょうし、スポーツリハビリの専門家になる方はどこかのスポーツチームに所属したりスポーツジムのスポーツトレーナーとして働くことになります。
スポーツトレーナーに求められることは筋肉疲労の効率的な取り方や、筋肉がより機能的に使えるようになるトレーニングを調整すること、そして体のコンディション調整を行うことなどがあります。しかしこれらは実は理学療法士の資格がいらないのです。
ですが理学療法士の資格を得るために学ぶ様々な知識は、スポーツトレーナーとして必須となるものばかりなので、この分野は理学療法士が非常に有利になっています。


理学療法士の給料
理学療法士の資格を持っている人の給料は、スポーツトレーナーとして生きていくのかそれとも介護や医療の方向で生きていくかによって大きく異なります。
介護や医療の方向で働いている人はだいたい月給が23万〜28万となっていて、年収にして350万円〜500万円となっているようです。時給は1,200円~1,700円くらいです。
給料 | 金額 |
年収 | 350万円〜500万円 |
月収 | 23万〜28万円 |
時給 | 1,200円~1,700円 |
もちろん働く病院の規模によっては上記以上の給料も期待できるので、あくまでだいたいの目安として捉えてくださいね。
この理学療法士の収入は思った以上に高くないと感じた方もいるかもしれませんが、それでも食べていくには十分な給料が貰えるようになりますので、資格としては有用なものと判断できます。
理学療法士の資格取得ルート
理学療法士は作業療法士や言語聴覚士と同じく国家資格となっているため資格取得するためのルートも厳密に定まっています。
理学療法士の受験資格
理学療法士は通信講座で通うことはできないので、必ず以下の学校を卒業しなければ受験資格を入手できません。また、社会人の場合は、以下の最終学歴者で指定学校を卒業すれば受験資格を得ることができます。
最終学歴 | 受験資格の条件 |
高校卒業者 | 文部科学大臣または都道府県知事が指定した4年制大学 短期大学(3年制)、専門学校(3年制、4年制) 特別支援学校(視覚障害者が対象)を卒業 |
大学卒業者 | |
その他 | 海外で理学療法士法の学校や養成校を卒業または免許を取得 |
4年制学校の昼間部 | |
学費 | 初年度納入金、入学金、受講料など 合わせて総額約600万円前後 |
4年制学校の夜間部 | |
学費 | 初年度納入金、入学金、受講料など 合わせて総額約500万円前後 |
理学療法士は国家資格となっているためには、養成校で3年以上学んで、必要な知識と技術を身につけることが必要となってきます。つまり養成校で学んでいない方はNGとなるということです。また作業療法士の資格を持っている人なら、養成校で2年以上学べば受験資格を得ることができます。
そのため、この資格を社会人になってからとろうと思っている方は夜間の学校で目指す人がかなり多いのです。
理学療法士のカリキュラム
理学療法士の受講は大学や専修学校によって取得科目の内容は一部異なりますが、以下の3つに分類されます。
- 基礎科目
医療に従事する人間としてのマナーやコミュニケーション力、障害の理解、社会福祉を幅広く学びます。 - 専門基礎科目
理学療法士になるための基礎知識や医学を深め、医療従事者としてリハビリ―テーションなどを学び向上させます。 - 専門科目
理学療法士の専門講師から検査、評価、訓練、支援方法を学び知識を身につけます。グループ演習を行い、チームで取り組み実践力と経験を身につけ、地域医療に貢献できる力を養います。
1年次 | 理学療法士の専門分野の基礎を学びながら習得します。 仲間とコミュニケーションを通して豊かな人間性と教養を養います。 |
2年次 | 医学や科学、心理学に関する専門的な知識・技術を修得。 検査の練習などを通し当事者の生活環境の理解を深めます。 |
3年次 | 病院や教育現場にて当事者と対話をしながら 検査や評価の臨床実習をして実践修得を目指します。 |
4年次 | これまで学んだ言語聴覚士として総合的な実習を行い 4年間の集大成をします。 |
理学療法士の国家試験概要
理学療法士の国家試験の内容は以下になります。
試験日 | 毎年 2月下旬ごろ (2019年は筆記試験2/24日、口述試験及び実技試験2/25月) |
申込書受付 | 12月~翌年1月初め |
試験会場 | ■筆記試験 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県及び沖縄県 ■口述試験及び実技試験 東京都 |
受験資格 | 上記参照 |
受験科目 | ■筆記試験 (1)一般問題 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、 リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。) 臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び理学療法 (2)実地問題 運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、 臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び理学療法 ■口述試験及び実技試験 重度視力障害者に対して、筆記試験の実地問題に代えて 次の科目について行う。運動学、臨床心理学、 リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。) 及び理学療法 |
受験料 | 10,100円 |
試験方式 | 筆記試験は5肢択一式のマークシート方式 午前中100問、午後100問の計200問が出題 |
試験時間 | 午前2時間40分 午後2時間40分 |
合格基準 | 学科試験の合格基準は例年120点以上で合格となります。 ・一般問題:160点満点、実地問題:120点満点 ・総得点:165点以上/280点満点 実地問題:43点以上/120点満点 ■第52回では↓ ・総得点:168点以上/280点満点 ・実地問題:43点以上/120点満点 |
合格率 | 86.0%(過去10年間の平均) |
合格発表 | 3月下旬 ホームページまたは受験地にて受験番号を掲示 |
理学療法士の資格講座
理学療法士の資格を取得するには、通学講座を受講する必要があります。
リハビリ―テーションの理念を学習し、実習カリキュラムを通して理学療法の基礎知識と技術を身に付けることができます。
参考までに一部スクールを紹介しますので資格取得の参考にしてください。
スクール名 | 東海医療科学専門学校 |
講座種別 | 通学講座 |
入学金 | 200,000円 |
受講料 | 700,000円 その他50万円(実習費、施設費など) |
開講時期 | 4月入学 |
受講期間 | 3年 |
回数 | 全日制 |
受講時間 | 90分/1時限(1回あたり) |