処遇改善加算の不正受給とは?加算返還・停止を受けた3事例を紹介

処遇改善加算の不正受給介護職員の制度

介護職員の待遇改善を目的として2012年から導入されたのが処遇改善加算です。

これは、介護報酬に上乗せした加算額を職員の給与として還元してもらう仕組みで、事業所や施設の9割以上がこのⅠ~Ⅲの加算を取得していますが、介護保険法が改正されると度々変更があり(2019年は10月に改定)これを正確に理解して運用しなければ違反になってしまいます。

不正受給となってしまうのはどんな事例なのか見ていきましょう。

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処遇改善加算の不正受給とは?

誤った運用をすることで、意図的なものでなくとも不正受給とみなされてしまうことがあります。処遇改善加算を受けるときにはおもに以下のような点で注意が必要です。

加算額の使途

処遇改善加算で受けた加算額は、職員の給与の上乗せ分として使うことが定められ、備品の購入など、ほかの経費としての使用は認められていません。

加算対象となる職種は介護職員、生活支援員、訪問支援員などで、介護職と兼務していない事務職や医療職の職員のほか、管理者やサービス責任者も条件を満たさない場合加算対象外となり、これらの職員の給与には加算額を充てることはできません。

対象職員の賃金以外の目的に加算額を使うのは、不正受給となってしまいます。

実績報告書の未提出

加算を受けている事業者は各事業年度における最終の加算があった月の翌々月末日までに、実績報告書を提出しなければなりません。

例えば、加算を算定するサービス提供が最後にあったのが3月の場合、支払いは5月になることから、実績報告書の提出は7月末日までとなります。

報告書には、加算による賃金改善の実施期間、職員の常勤換算数、一人当たりの賃金月額、支払った賃金の総額などを記載し、事業所・法人単位で作成します。

各事業年度の実績報告書の提出が無かった場合は、不正受給として加算された全額を返還する必要があります。

虚偽の報告をする

職員の給与に充てる加算額を減らし残りをほかの目的に流用しながら、全額を給与額に充当した、など実績報告書に虚偽の記載をして報告した場合は、当然不正請求になります。

また、処遇改善加算の適用条件を満たしていないのに、条件を満たす待遇改善の取り組みを行ったなど、実績を偽って報告し加算を受けた場合も同様で、不正受給となり加算額の全額返還はもちろん、指定取り消しなどの処分を受けることがあります。

賃金改善が行われていない

処遇改善加算の目的は、一時金や賞与も含んだ職員の賃金をアップすることですから、加算を受けながら算定額に相当する賃金改善が行われていないと不正受給となります。

経営の悪化などで、事業の継続のため一時的に賃金を引き下げて改善を行う場合は、特別事情届出書を提出し、状況が改善した後は引き下げ前の賃金水準に速やかに戻すこととされています。

引き下げを行いながら特別事情届出書を出していなければ、加算の一部または全額の返還となる場合があります。

処遇改善加算の返還・加算の停止とは?

介護サービス事業者が加算を不正に受けていると判断された場合、都道府県知事等は事業者に対し加算額の返還を求めたり、加算の停止ができます。

都道府県知事が行う行政処分には以下の4つがあり、問題の程度や改善指示に対する対応によって各処分が行われますので、できるだけ早い段階で対応し加算の返還や改善指導に応じることが大事です。

違反が疑われて監査に入られた結果、問題が見つかり悪質と判断されたら、改善命令を経ずに指定取り消しなど重い行政処分になる場合もあります。

改善命令

行政処分のうち一番軽い処分で、処遇改善加算について行った誤った運用の改善を求められます。その修正した結果に基づいて、事業者は受け取った加算額の一部または全額の返還を行います。

効力の一部停止

改善指導に従わない場合に行われる行政処分で、介護サービスの提供や介護報酬の請求の効力を一定期間、一部停止されます。

具体的には、これまで利用している利用者の介護サービス提供と介護報酬請求はできますが、新たに利用者を受け入れることが禁じられ、新規のサービス提供と介護報酬請求が不可能になります。

効力の全部停止

効力の一部停止よりも重い処分で、従来の利用者および新規利用者に対するすべての介護サービスの提供と、介護報酬請求が一定期間行えなくなります。

効力の一部停止・全部停止ともに、問題点を是正し一定期間が過ぎると事業を再開することはできます。

事業者指定の取消し

介護事業者としての指定を取り消されることで、利用者の受け入れや介護報酬の請求は一切できなくなるので、事業所や施設の運営は不可能になり、その後5年間は新たな指定を受けることができません。

また、不正受給した介護報酬を全額返還するほかに、課徴金が課せられる場合があります。

処遇改善加算返還の事例

どのような例で加算の返還や処分が行われているのか、実際の事例をみてみましょう。

不正受給の他にも多数の違反があった例

事業者リハビリデイサービス「なでしこ」(大阪府柏原市)
サービスの種類通所介護、介護予防通所介護、第1号通所サービス(みなし指定)
不正の内容
  1. 人員基準違反
    必要な人員数を満たしていなかった。
  2. 運営基準違反
    利用定員を超過して受け入れている日があった。
  3. 不正受給
    介護職員処遇改善加算Ⅰの総額を上回る賃金改善を行わず、
    加算の算定要件を満たしていないのに、
    実際には勤務していない職員の賃金改善を行ったように
    偽装することで、介護報酬を受け取っていた。

ほかにも虚偽報告、虚偽答弁、法令違反などの違反があった。

処分内容指定取り消し(平成30年2月28日)
473万1617円の返還と、この金額の40%を課徴金として支払う

返還金額が高額だった例

事業者指定障害福祉サービス事業所
「社会福祉法人 白百合福祉会」(福岡県北九州市)
サービスの種類生活介護
不正の内容
  1. 不正の手段で指定を受けたこと
    指定の申請および変更の届出で虚偽の書類を作成し、
    要件を満たしているように装い指定を受けた。
  2. 不正受給
    ・処遇改善加算について虚偽の実績報告書を提出し加算を受けた。
    ・要件を満たしていない従業者を配置していたり、個別支援計画が
    未作成など、本来減算すべき報酬をいずれも不正に請求して受給した。
    ・加算要件を満たしていない送迎加算や基本報酬を不正に請求し受給した。
処分内容実地指導(平成30年9月、10月 のべ2日間)

監査(平成30年11月 のべ6日間)

聴聞(平成31年3月5日)

指定取り消し(平成31年3月25日)
不正受給した8500万円について、指定市町村が返還命令を行う

一部効力の停止を受けた例

事業者グループホーム逢妻 (愛知県豊田市)
サービスの種類認知症対応型居宅介護
不正の内容(1)不正受給
介護職員処遇改善加算の要件を満たしていないにもかかわらず、
加算分の請求を繰り返し行い不正受給を行った。
介護請求事務への著しい注意欠如と介護保険に関する知識を
持った職員の整備ができていなかったことが原因。
処分内容一部効力の停止
(6か月間の新規利用者受け入れの停止および介護報酬30%減額)
327万1424円の返還とその40%の課徴金の支払い

おわりに

今回取り上げた事例のように、知識の不足による不正受給でも、介護報酬の返還や行政処分など、経済的にも社会的にも、事業所の経営に大きな損害が出ることになってしまいます。

処遇改善加算は介護職員にとっても自身の給与に関わる大事な仕組みなので、運営者や介護報酬の請求を行う事務職員に限らず、介護職で働くみんなが正しい知識を学んでいくことが大切です。

介護職員の制度
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