月々のおむつ代が高いから医療費控除を受けたい
おむつ使用証明書について詳しく知りたい
上記のようにおむつ使用証明書を使用して医療費控除を受けたい方はこの記事を読むことで解決できます。
この記事ではおむつ使用証明書の発行条件・手数料・書き方についてわかりやすく解説しました。さらに医療費控除の計算方法から手続きの流れまでまとめましたのでぜひ参考にしてみてください。
おむつ使用証明書とは
おむつ使用証明書とは医師の判断でおむつ使用の必要性があると判断された上で「購入」または「レンタル(借りる)」した紙おむつ代金について、医療費控除を受ける際に必要な書類のことです。
医師により発行された「おむつ使用証明書」は紙おむつの「購入費用」または「レンタル料」を医療費控除として確定申告する場合に必要となります。
おむつ使用証明書の発行条件
おむつ使用証明書が発行できる方の条件は以下の条件を満たした方が対象となります。
- 傷病により概ね6ヶ月以上にわたり寝たきり状態(寝たきり度BまたはC)にあると医師に認められた方
- 尿失禁の発生可能性あり
- 傷病について医師による治療を継続して行う必要があり、おむつの使用が必要であると認められた方
座位を保つことを自力で行うか介助を必要とするかどうかで区分する。日常生活活動のうち、食事、排泄、着替のいずれかにおいては、部分的に介護者の援助を必要とし、1 日の大半をベッドの上で過ごす場合が該当する。排泄に関しては、夜間のみ”おむつ”をつける場合には、介助を要するものとはみなさない。なお、”車いす”は一般のいすや、ポータブルトイレ等で読み替えても差し支えない。
B-1 は介助なしに車いすに移乗し食事も排泄もベッドから離れて行う場合が該当する。
B-2 は介助のもと、車いすに移乗し、食事または排泄に関しても、介護者の援助を必要とする。
日常生活活動の食事、排泄、着替のいずれにおいても介護者の援助を全面的に必要とし、1 日中ベッドの上で過ごす。
C-1 はベッドの上で常時臥床しているが、自力で寝返りをうち体位を変える場合が該当する。
C-2 は自力で寝返りをうつこともなく、ベッド上で常時臥床している場合が該当する。
寝たきりではないけど、おむつ使用証明書は発行される?
寝たきりではないけど、常時おむつが必要な方はたくさんいると思います。
ネットで調査すると「寝たきりではないけど、おむつ使用証明書が発行された」と書いてあるところがありました。しかし、これは医師や自治体、税務署等がきちんと理解していない可能性があります。
厚生労働省の文言では「寝たきり状態」が必須条件に含まれていますので、発行されたとしてもかなりグレーです。
発行条件は、寝たきりBまたはCであり、
- 認知症で尿失禁がある
- 過活動膀胱で尿漏れがある
- 夜尿症がある
など、医師に必要と認めれば医療費控除の対象になります。
当てはまりそうな方は、まずかかりつけ主治医にご相談してみてください。赤ちゃんのおむつは対象外になります。
おむつ使用証明書を書く人
おむつ使用証明書は、寝たきり状態の原因となった傷病について継続して治療を行っている医療機関の医師が書くことになっています。
つまりはかかりつけ主治医になります。
- 入院中及び退院時
入院(所)した医療機関の医師が記入します - 在宅で治療中
継続して治療を行っている医療機関の医師が記入します
例えば、「A病院」に入院をしていて別の「B病院」に転院した場合は、A病院とB病院の2箇所からおむつ使用証明書を書いてもらう必要があります。
かかりつけ医師へ「おむつ使用証明書」の申請用紙を提出し、記載をしてもらいましょう。
おむつ使用証明書の記入例
おむつ使用証明書の記入例は以下のようになります。
以下はおむつ使用証明書の書いてもらう箇所です。
- 患者情報
住所、氏名、生年月日、性別 - 傷病名
〇〇〇によりおおむね6ヶ月いじょうにわたり寝たきり状態にある又はあると認められる - 治療状況
入院(所)中、在宅で治療中 - 必要期間
始期〇年〇月〇日から 終期〇年〇月〇日まで - 証明者
医療機関名、所在地、医師氏名
おむつ使用証明書の費用・手数料
おむつ使用証明書を書いてもらうにあたり以下の費用がかかります。
- 医療機関規定の診察料
- 文書作成料(1,000円~5,000円ほど)
料金は医療機関ごとに異なりますので、詳しくは各医療機関にお問い合わせください。
おむつ使用証明書の2年目以降の申請について
翌年(2年目以降)からは「おむつ使用証明書」は提出する必要がなく、代わりに以下の①または②があれば可能です。
- 介護保険法の規定に基づく主治医意見書の内容を市町村が確認した書類(おむつ使用確認書)
- その主治医意見書の写しの添付または提示
主治医意見書については、
- 障害老人の日常生活自立度(寝たきり度BまたはC)
- 尿失禁の発生可能性あり
を記載することとされています。
この「主治医意見書」を活用して、1年目の状態が継続していることを確認できれば、2年目以降、医師が発行した証明書に代えることができます。
市町村が発行する「おむつ使用確認書」の発行手数料
翌年(2年目以降)からは、お住まいの市町村が発行する「おむつ使用確認書」を使用する場合、手数料が必要となります。
おもに無料のところが多いようですが、手数料については市町村ごとに金額が異なりますのでご注意ください。
発行手数料の例
市町村名 | 発行手数料 |
北海道室蘭市 | 250円 |
東京都渋谷区 | 無料 |
埼玉県越生町 | 無料 |
大阪府茨木市 | 300円 |
沖縄県宜野湾市 | 200円 |
医療費控除とは
医療費控除とは、医療費が高くなった場合に、その負担を少しでも軽くするために、一部の医療費負担を税金から差し引くことです。
医療費控除を受けられる人
医療費控除を受けられる方は一年間(確定申告する前年の1/1から12/31まで)の医療費総額が以下の二点に該当する方です。
- 「10万円」を超える場合
- 「所得金額の5%の金額」を超える場合
医療費控除の申請は「5年まで遡れる」ということです。例えば、現在が2018年2月であれば、2017年から5年遡れるので、2012年まで遡ることが可能になります。
医療費控除の対象になるもの一覧
基本的に医師あるいは歯科医師が治療目的として処置したものについては認められます。
そのため、予防目的、美容目的、健康増進が目的なものは対象になりません。
具体的には以下の通りです。
病院への入院費や通院費
- おむつ代
- 診療費、治療費、入院費
- 病院までの交通費
- 診断書
- マッサージ代、あんま代など
- 松葉杖や義肢などの購入費用
- 視力回復手術、メガネ代、コンタクトレンズ代
出産費用
- 出産における定期検診や費用
- 流産時、中絶時の費用
歯科処置費用
- 虫歯治療費
- 金歯、銀歯、入れ歯などの義歯費用
- 歯列矯正費用
医薬品費用
- 医師の処方によって薬局で購入をした医薬品費用
- 治療のために、病院等に行かず、薬局で購入した医薬品(OTC医薬品)費用
医療費控除の対象となる紙おむつ・尿取りパッド
基本的に、おむつの商品パッケージには「(社)日本衛生材料工業連合会のガイドラインに基づく表示」が記載されており、そこに「大人用おむつ」という記載が品名欄にあれば、医療費控除対象商品になります。
医療費控除を受けるための必要書類
医療費控除を受けるための必要書類は以下の通りです。
- 勤務先の源泉徴収票
- 医療費の領収書やレシート(合計額の計算のため、提出はしない)
- 医療費通知(なくても良いが、あれば便利です)
- 交通費の領収書(タクシー代など)
- 医療費控除の明細書
- 確定申告書A様式
- マイナンバー本人確認書類の添付台紙
医療費領収書およびレシートの注意点ですが、2018年の確定申告から、つまりは2017年度分の医療費計上に関しては、レシートや領収書の添付は必要なくなり、「医療費控除の明細書」に、各医療機関の合計額を記入するのみとなります。
医療費領収書およびレシートは自宅で5年間保存する必要があります。いざという時に提出を求められることがあるので、紛失などに注意して下さい。
医療費控除額の計算方法
所得税額の算出方法(年末調整)
課税給与 所得金額(A) |
税率(B) | 控除額(C) | 税額 =(A)×(B)-(C) |
195万円以下 | 5% | ー | (A)×5% |
195万円以上~330万円以下 | 10% | 97,500円 | (A)×10%-97,500円 |
330万円以上~695万円以下 | 20% | 427,500円 | (A)×20%-427,500円 |
695万円以上~900万円以下 | 23% | 636,000円 | (A)×23%-636,000円 |
900万円以上~1,742万円以下 | 33% | 1,536,000円 | (A)×33%-1,536,000円 |
医療費控除の計算式は以下の2通りになります。
- 所得金額が200万円未満の場合
- 所得金額が200万円以上の場合
① 所得金額が200万円未満の場合
所得金額が180万円の場合、総所得金額の5%
つまり、【1,800,000円×0.05=90,000円】
9万円を超える医療費を還付申告することで医療費控除することができます。
計算方法
↓所得税額
180万円(課税所得額)×5%-0円(所得控除額)=90,000円
↓還付額
11万円(医療費控除額)×5%=5,500円
90,000円のうち、5,500円が還付される
② 所得金額が200万円以上の場合
所得金額が200万円の場合、10万円を超える医療費を還付申告することで医療費控除することができます。
計算方法
↓所得税額
210万円(課税所得額)×10%-97,500円(所得控除額)=112,500円
↓還付額
10万円(医療費控除額)×10%=10,000円
112,500円のうち、10,000円が還付される
医療費控除申請手続の流れ
- 医療費支出金額の算出
- 医療費控除明細書への転記
- 医療費控除額の計算
- 確定申告書A様式の記入
- 税務署に提出
医療費控除の申請手順は以下の通りです。
【1】医療費支出金額の算出
同一生計の家族の領収書やレシートなどを集め、医療機関や薬局ごとに合計金額を算出する。
【2】医療費控除明細書への転記
【1】で算出した各金額を医療費控除の明細書に転記します。
【3】医療費控除額の計算
医療費控除明細書の下部に医療費控除額計算欄があるので、各医療費金額を転記後、医療費控除額を計算します。
【4】確定申告書A様式の記入
医療費控除額を計算できれば、次に確定申告書A様式にご自身の収入、所得控除、所得税などを源泉徴収を基に書き込みます。医療費控除の欄には③で計算した控除額を記入するようにして下さい。
【5】税務署に提出
上記で作成した「医療費控除明細書」と「確定申告書A様式」の記入が完了したら、「源泉徴収票」、「マイナンバー本人確認書類」と一緒に税務署に提出して下さい。
ちなみに提出方法としては、
- 税務署に直接持参
- 税務署に郵送
- e-Taxによる提出
の3つの方法があります。
おむつ使用証明書の疑問を解決Q&A
おむつ使用証明書はさかのぼって確定申告できるの?
さかのぼって確定申告できるかを見るためには、医師により発行してもらったおむつ使用証明書の「必要期間」に記載されている日付【○年〇月〇日】以降に購入されたおむつ代であれば医療費控除の対象です。
例)
・おむつを購入が6月1日
・おむつ使用証明書の必要期間が7月1日
・おむつ使用証明書の発行が8月1日
この場合、重要なのは「おむつ使用証明書の必要期間」であるため、7月1日以降に購入されたおむつ代はすべて医療費控除の対象になります。ただし、6月1日~6月30日に購入された分は含まれません。
おむつ使用証明書は入院中でも医療費控除の対象になるの?
医師の判断によりおむつを使用された場合、医療費控除の対象になります。
おむつ使用証明書は毎年提出が必要なの?
必要です。ここで注意して頂きたいのが、おむつ購入費用の確定申告を行う1年目には「医師が発行したおむつ使用証明書」が必要であり、2年目以降は毎年その翌年からは「医師が発行したおむつ使用証明書」は提出する必要がなく、代わりに「介護保険法の規定に基づく主治医意見書の内容を市町村が確認した書類」あるいは「その主治医意見書の写しの添付又は提示」でも差し支えありません。
対象者が死亡した場合の申告はどうなるの?
死亡時であっても、条件を満たしていれば、申告することは可能です。上記の場合、死亡日を基準として、申告可能かどうか判断されます。
寝たきりではないけど医療費控除はできないの?
基本的に障害老人の日常生活自立度(寝たきり度BまたはC)でない場合は、おむつ使用証明書は発行されず医療費控除の対象外です。尿失禁があり常時おむつが必要であっても寝たきり度BまたはCに当てはまらないと医療費控除はできません。
おわりに
みなさん、おむつ使用証明書について分かって頂けましたでしょうか。何よりもおむつ使用者であっても、「概ね6ヶ月以上寝たきりの方」でないと医療費控除を受けられないということがポイントになります。
申請する際は、レシート等の提出は不要ですが、しっかり保存するよう心掛けましょう。