介護保険制度って、具体的にどんな内容なの?
このように
- 介護保険制度について詳しく知りたい方
- 介護保険で受けられるサービスが知りたい方
- 介護保険の対象年齢が知りたい
など上記の方々はこの記事を読むことで解決できます。
年々、加速度的に高齢化が進み、介護施設とそこで働く介護職員の需要はますます増えています。介護施設やサービスを利用する高齢者にとっても、働く介護職の人々にとっても大切な制度が、高齢者介護を支える「介護保険制度」です。
この制度によって必要な介護サービスが提供され、介護施設が運営でき、介護に従事する人の賃金が支払われています。
この記事では、介護保険制度の歴史、介護保険制度とは、介護保険制度の仕組み、介護保険の被保険者、介護保険の支払い方法、介護保険制度で対象となる特定疾病、介護保険被保険者証、要介護認定とは、介護保険の申請、介護保険で受けられるサービス、などについてわかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
介護保険制度の歴史
増大する介護ニーズとそれを支える家族状況の変化に対応するため、高齢者介護を社会全体で支え合う仕組みとして、介護保険法が施行され介護保険制度が始まったのは平成12年のことです。
- 昭和38年老人福祉法が施行、特別養護老人ホームや訪問介護法が創設
- 昭和48年老人医療費の無料化、ショートステイやデイサービス事業が創設
- 昭和57年老人保健法が制定、老人医療費の一定額負担が導入
- 平成元年ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)が策定、施設等の緊急整備などが推進
- 平成2年福祉8法の改正
- 平成4年老人保健法の改正
- 平成6年高齢化率が12%になり、厚生省(当時)に高齢者介護対策本部が設置され、介護保険制度の検討
- 平成12年介護保険制度の実施
介護保険制度以前の問題点
介護保険制度が創設される前、日本では「老人福祉」と「老人医療」の2つの制度がありました。
老人福祉
老人福祉の制度では、特別養護老人ホームやデイサービス、ホームヘルプサービスなどが対象になっていましたが、次のような問題点がありました。
- 市町村がサービスの種類を決めるため利用者が選択できない
- 利用にあたって所得調査が必要で利用者が心理的な抵抗感を持つこと
- 市町村が委託しているため、提供されるサービス内容が画一的になりがち
- 収入に応じた利用料の負担が、中高所得者にとって重い負担になること など
老人医療
また、老人医療の制度では、老人保健施設、療養型病床群、一般病院のほか、訪問看護やデイケアが対象でしたが、利用者負担が老人福祉の制度よりも低いことから、中高所得者層の介護を理由とする一般病院への長期入院が増加し、その結果、以下のような問題が起こりました。
- 長期入院増加による医療費の増加
- 介護の施設として病院は体制が不十分であるのに実質、介護施設化していること
このような状況から従来の制度では、介護を必要とする高齢者に対して十分に対応しきれないとして、平成9年に介護保険法が成立し平成12年4月から施行、介護保険制度が実施されることになりました。
その後も法改正によって介護保険制度は度々見直しがされています。
近年の改正内容(平成26年~29年)
平成26年の改正
介護保険制度の近年の改正内容をふりかえってみると、
平成26年の改正では以下の策定されました。
- 「地域包括ケアシステムの構築」高齢者が住み慣れた地域での生活を継続
- 「費用負担の公平化」低所得者の保険料軽減と高所得者・資産のある人の利用者負担を見直し
- 「オレンジプラン」認知症施策総合戦略
中でもオレンジプランは7つの柱があり、年々増加する認知症高齢者を社会全体で支えることを目的としています。
・認知症の普及・啓発の推進
・適切な医療・介護の提供
・若年性認知症施策の強化
・介護者への支援
・地域づくりの推進
・研究開発及びその成果の普及の推進
・認知症の人の視点の重視
平成29年度の改正
特に高い所得の利用者に対する3割負担が導入されたことや、福祉用具貸与価格の見直し、介護と医療を一体化した新しい介護保険施設である「介護医療院」の創設などが決まりました。
この介護療養院は、医療ケアを必要とする要介護高齢者が長期療養と生活ができる、介護老人保健施設や介護療養型医療施設に代わる施設として普及が期待されています。
参考 介護医療院とは|サービス内容・1日の流れ・メリットデメリットを解説
これに伴って従来の介護療養型医療施設は、徐々にその数を減らし廃止される予定です。
参考 介護療養型医療施設(療養病床)とは|サービス内容や1日の流れなどを解説
介護保険制度とは?
核家族が一般的になり、介護が必要な高齢者を家族だけで支えるのは難しいことから、介護保険の加入者が保険料を出し合って社会全体で高齢者を支え、また自分が介護を必要としたときには支えてもらえる、というのが介護保険制度です。
介護保険制度のもととなっている介護保険法では、次の3つの考え方が柱となっています。
- 自立支援・・・単に高齢者の介護や身の回りの世話をするだけではなく、自立を支援すること
- 利用者本位・・・利用者自身が選択した保健医療サービス、福祉サービスを受けられる制度であること
- 社会保険方式・・・給付と負担の関係が明確な社会保険方式であること
そして具体的には、従前の制度の特徴を改善して、以下の内容になっています。
- 市町村がサービス内容を決める
- 医療と福祉をそれぞれ申し込まなければならないこと
- 自治体や公的な団体中心でのサービス提供
- 中高所得者は費用負担が重く利用しにくい
- 利用者がサービスの種類や事業者を選択できる
- 介護ケアプランを作り、医療や福祉のサービスを総合的に利用できる
- 民間企業を含め、さまざまな事業者が多彩なサービスを提供する
- 所得にかかわらず利用者負担は1割
(平成27年8月以降、一定以上の所得者は2割負担)
加入年齢(40歳から)
介護保険の加入義務は以下になります。
- 市区町村に住んでいる40歳以上の65歳未満の健康保険加入者
- 市区町村に住んでいる65歳以上の人の健康保険加入者
加入者は被保険者として保険料を負担し、要介護・要支援状態になった時には、介護給付(介護サービスの提供)を受けることができます。
・海外に居住している人
・在留資格または在留見込み期間が1年未満の短期滞在の外国人
・身体障害者療養施設などの適用除外施設に入所している人
などで、原則保険料の徴収はありませんが、第2号被保険者の人は「介護保険適用除外届」の提出が必要になります。
制度の運営主体(保険者)は市区町村
介護保険制度は市町村と特別区(東京23区)が主体となって運営していて、国や都道府県、保険料を納めている加入者が共同で支えている制度です。
各市区町村の介護保険課などが担当窓口で、介護保険料に関する事務や申請手続きなどを行っています。(各市区町村で担当課の名称は違います)
3年ごとに改正
介護保険法が成立した時に、施行後も見直すことが付帯決議で決められたことと、介護保険制度を運営する市区町村は、介護保険事業(支援)計画を3年ごとに立てることになっているので、結果的に3年ごとに内容が見直され法改正が行われています。
これまでに、2005年、2008年、2011年、2014年、2017年、2020年と、計6回の改正が行われました。
次回の改正は2023年4月になります。
介護保険制度の仕組みとは?
介護保険制度は、以下の三者によって成り立っています。
- 制度を運営している市区町村
- 介護保険サービスを提供している事業者
- 保険料を負担している被保険者
介護保険制度は、公費(税金)と徴収した介護保険料を各50%の割合で合わせた財源で運営されています。この税金のうち市町村の税収によるのは12.5%、都道府県が同じく12.5%、国は25%のを負担しています。
保険料のうち22%が第1号被保険者から納入されたもの、28%は各健保組合等を通して納入されたものになります。
- 被保険者は保険料を支払います。
- 介護が必要になったときには利用者として介護サービスの提供を受けます。
- 利用者はサービス利用料の1~2割を支払いますが、施設の居住費や食費は介護保険給付の対象外で、利用者と施設等との契約になります。
- 事業者は利用者との契約によって介護サービスを提供し、利用者から1~2割の支払いを受け、残りの8~9割の費用を、市町村が委託した国民健康保険連合会(国保連)に介護報酬として請求し支払いを受けます。
- 市区町村は被保険者から介護保険料を徴収して財源を確保し、サービスを提供した事業者が請求する介護報酬を、国保連を通して事業者に支払います。
介護保険の被保険者は2タイプ
介護保険の被保険者は「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2タイプに分けられます。
第1号被保険者(65歳以上)
65歳以上で市区町村に住んでいる人で、65歳の誕生日の前日が資格取得年月日になります。それまで第2号被保険者だった人はその資格を喪失し、同時に第1号被保険者の資格を取得することになります。
第1号被保険者は、全国で3202万人、うち65~74歳が1652万人、75歳以上が1549万人とされています。
例)第2号被保険者が5月1日で65歳になる場合、4月30日が資格喪失年月日となり、同時に第1号被保険者の資格取得年月日となります。
誕生日の前日が属する4月分の介護保険料は、第1号被保険者として納める必要があります。(第2号被保険者としては4月分を納める必要はありません)
市区町村により所得に応じて段階に分けられた定額が決められていて、所得段階がいくつに分かれているかは各市区町村によります。
年金額が年額18万円以上であれば、保険料は2ヶ月ごとに支給される年金から天引きされ、それ以下の年金額の人については、年10回の納期に分けて個別に市区町村に納めます。
第2号被保険者(40~65歳まで)
市区町村に住んでいる40~65歳までの健康保険加入者(年齢に該当する被扶養者も含む)を第2号被保険者といい、全国で4247万人とされています。
第2号被保険者は、40歳の誕生日の前日が資格取得年月日になります。
例)5月1日生まれの人は4月30日が資格取得年月日となり、4月分から介護保険料が徴収されます。5月2日生まれの人は5月1日が資格取得年月日となり、5月分からの徴収です。
標準報酬月額および標準賞与額に介護保険料率をかけて保険料が決められ、健康保険料と合わせて給与(賞与)から徴収されます。
介護保険の支払い方法
介護保険料の計算式
国民健康保険以外の保険に加入している場合
この介護保険料は、会社と被保険者で折半して支払います。
*介護保険料率は加入している健康保険組合により異なります。
*標準報酬月額は通勤代・残業代を含み50等級に分けて決められています。
*標準賞与額とは3ヶ月を超えて期間ごとに支払われる報酬額です。
(1000円未満切り捨て)
国民健康保険の場合
*所得割は世帯ごとに前年の所得に応じて算出、平等割は一世帯ごとに課せられ、均等割は被保険者一人について課せられるものです。
第2号被保険者となる被扶養者の保険料は、第2号被保険者または、特定被保険者(39歳以下・適用除外の人で、第2号被保険者を扶養している人)の保険料に含まれているので、
個別に納める必要はありません。
また、育児休業中の人の介護保険料は、健康保険料と同様に免除されます。
介護保険で対象となる特定疾病
第2号被保険者のうち、加齢による病気など特定疾病を原因として身体上または精神上に障害があり「6ヶ月に渡り継続して常時介護が必要な要介護状態」「または6ヶ月に渡り継続して日常の身の回りのことを行うのに支障がある要支援状態」になった場合は、介護保険サービスを利用することができます。
対象となる特定疾病とは以下の病名になります。
特定疾病(16種類)
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 慢性関節リウマチ
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 後縦靭帯骨化症
- 骨粗鬆症による骨折
- 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性痴呆、クロイツフェルト・ヤコブ病など)
- パーキンソン病及び大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群)
- 多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群など)
- 糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害
- 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)
- 閉そく性動脈硬化症
- 慢性閉そく性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息)
- 両側の股関節、または股関節に著しい変形を伴う変形関節症
介護保険被保険者証
65歳以上の被保険者には、交付された被保険者証が郵送で送られてきます。
40~64歳の被保険者には、特定疾患に該当するなど介護認定された時は交付されますが、通常の場合、被保険者証は発行されないので、希望する場合は申請します。
要介護認定とは?
介護サービスを受けるために必要な認定で、身体の状態や疾患、日常生活の状況から、介護や支援の必要度を判定するものです。
認定は市区町村に申請し、コンピューターによる一次判定から、介護認定審査会での二次判定を経て決まります。
介護保険の申請~認定までの流れ
市区町村の担当窓口(介護保険課など、市区町村により名称は異なります)に申請を行い、面談などで認定に関する調査を受けた後、要介護または要支援の介護度が判定され、申請から30日以内に通知されます。
参考 介護保険の申請方法
要介護認定の区分
介護認定の区分は以下のような7つに分かれていて、区分により受けられる介護サービスが異なります。
区分 | 身体状態 | 利用可能サービス |
自立 | 日常生活上の基本的動作を自分で行うことができる | 市町村の 介護予防事業 |
要支援1 | 日常生活はほぼ自分でできるが、現状を改善し、 要介護状態予防のために少し支援が必要 |
介護予防サービス |
要支援2 | 日常生活に支援が必要だが、要介護には至らず、 改善する可能性が高い |
介護予防サービス |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定。 排泄や入浴などに部分的介助が必要 |
介護サービス |
要介護2 | 立ち上がりや歩行などが自力では困難。 排泄・入浴などに一部または全介助が必要 |
介護サービス |
要介護3 | 立ち上がりや歩行などが自力ではできない。 排泄・入浴・衣服の着脱など全面的な介助が必要 |
介護サービス |
要介護4 | 日常生活能力の低下がみられ、 排泄・入浴・衣服の着脱など全般に全面的な介助が必要 |
介護サービス |
要介護5 | 日常生活全般について全面的な介助が必要。 意志の伝達も困難。介護なしでは日常生活が不可能 |
介護サービス |
ケアプランを作成
介護認定を受けたら、介護サービスを提供する事業者と契約して、要介護度に応じたケアプランをケアマネジャーに作成してもらいます。
利用者は、そのケアプランに沿った内容の介護サービスを事業所を通じて利用します。
参考 介護保険のケアプランとは
介護保険で受けられるサービスは?
介護保険で受けられるサービスは大きく分けて以下の3つになります。
- 居宅介護サービス
- 施設介護サービス
- 地域密着型サービス
その他軽度の方向けの「介護予防サービス」や「介護支援」のサービスもあります。
居宅介護サービス
- 居宅介護支援(ケアマネジメント)
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所(ショートステイ)
- 住宅改修
- 福祉用具
それでは居宅介護サービスについて1つずつ解説します。
居宅介護支援(ケアマネジメント)
利用者に必要な介護サービスを提供するためのケアプランの作成をします。
プランを作成するケアマネジャーは、サービスを提供する事業者と利用者、関係機関との連絡や調整も行います。
参考 地域包括支援センターとは?業務内容や3職種の役割を徹底解説
訪問介護
ケアプランに沿って、決められた時間に訪問ヘルパーが利用者の自宅を訪問し、食事・排せつ・入浴などの身体介護、掃除・洗濯・調理などの家事や買い物代行などの生活援助を行います。
1日に2回以上訪問する際は、2時間以上の間隔を空けることが必要で、通常は日中のみの訪問ですが事業所により時間外に対応する場合もあります。
また、訪問介護では医療行為をすることはできません。
参考 訪問介護(ホームヘルプ)とは|サービス内容・メリット・デメリットを解説
訪問看護
訪問看護師が自宅を訪問し、医師の指示に従って医療的なケアを行います。
病気の悪化防止と回復のために、点滴や注射などの医療行為、服薬管理、療養やリハビリに関する相談を受けて、ケアマネジャー等と連携したり、急変の際は緊急時対応も行います。
通所介護(デイサービス)
利用者がデイサービス事業所などに通所し、必要な介護を受けたり、他の利用者とともにレクリエーション等を行うもので、孤独になりがちな高齢者に生活のハリを与え、機能訓練や健康維持に役立ち、自宅で介護している介護者の負担を軽減する役割もあります。
参考 デイサービス(通所介護)とは|サービス内容・料金・一日の流れを解説
短期入所(ショートステイ)
自宅で介護している介護者が、冠婚葬祭や病気、出張その他で介護に従事できない期間に、介護が必要な高齢者を一時的に受け入れ、介護やレクリエーションなどを提供します。
介護サービスを利用しての連続利用は30日間までで31日からは全額負担となるほか、
利用日数は要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないこと、とされています。
(市区町村によって要件は異なりますが、半数を超えての利用が認められる場合もあります)
参考 短期入所生活介護(ショートステイ)の費用・料金を徹底解説
福祉用具
介護に必要な福祉用具の貸与(レンタル)または販売サービスです。
車いすやその付属品、リクライニングのある特殊ベッド、床ずれを防止する体位変換器、手すりやスロープ、歩行器などはレンタル、再利用に支障のある腰掛便座、入浴補助用具、簡易水槽などは、特定福祉用具として販売対象になっています。
住宅改修
手すりやスロープの取り付け・設置、段差の解消、便器の取り換え、引き戸等へのドア交換など、介護に必要な住宅改修にかかる費用を介護保険でまかなうことができます。
住宅改修の内容についてケアマネジャーに相談の上、工事前に必要な書類を添えた申請書を保険者(市区町村)に提出し、工事完了後に領収書等を提出することで、実際にかかった金額の9割相当額が支給されます。
支給限度基準額(20万円)の9割(18万円)が上限になります。
参考 住宅改修(リフォーム)とは|料金・費用、メリット・デメリット、利用方法を解説
施設介護サービス
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設(介護療養病床)
それでは施設介護サービスについて1つずつ解説します。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
自宅での生活が困難で、常に支援や介護が必要な65歳以上の人が、入所し生活する施設です。老健と違い入所期間に制限はなく、終身にわたり暮らすこともできます。
おもに自治体や社会福祉法人など公的な事業者が運営し、有料老人ホームなど民間の介護施設に比べ費用が低いことから、入居希望者が多く待機人数も多いと言われています。
参考 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設・特養)とは|サービス内容・メリット・デメリットを解説
介護老人保健施設(老健)
病院から退院後、自宅に戻る前のつなぎの施設として位置し、入居者の自宅復帰を目的としています。
必要な介護のほか、専門スタッフによる機能訓練や医療ケアを受けることができ、緊急時にも医療体制が整っているので安心です。
入居期間は原則3ヶ月で、自宅での生活が可能と判定された場合は退所しなければなりません。
参考 介護老人保健施設(老健)とは|サービス内容・メリット・デメリットを解説
介護療養型医療施設(介護療養病床)
病状は安定しているものの自宅での療養生活は難しいという人に、看護や介護を行う医療施設で、運営は医療法人が行い看護師の配置等が手厚いのが特徴です。
入所対象者は「要介護度1以上で、医学的管理が必要な高齢者」となっていますが、実際は要介護度4~5など介護度の高い人の入所が多く、医療現場の負担が問題視されていました。
参考 介護医療院とは|サービス内容・1日の流れ・メリットデメリットを解説
参考 介護療養型医療施設(療養病床)とは|サービス内容や1日の流れなどを解説
こうしたことから、介護療養型医療施設はいずれ廃止される予定になっており、現在病床数は徐々に減少しています。
地域密着型サービス
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 小規模多機能型居宅介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回、随時対応型訪問介護看護
それでは地域密着型サービスについて1つずつ解説します。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
身の回りのことはある程度できるものの、ひとりで暮らすのは心配、という軽度の認知症高齢者をおもに受け入れ、少人数で共同生活をするグループホームです。定員は9名以下と少人数で、家庭的な雰囲気が特徴です。
入居者ができるだけ自立した生活を保てるようにしながら、必要な介護や支援を行います。
参考 グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは|サービス内容や利用方法を解説
小規模多機能型居宅介護
施設への通所を中心にして、短期宿泊や、自宅への訪問を必要に応じて組み合わせ、生活支援や見守り、介護を同一の事業所で提供してもらえます。
利用する高齢者にとっては、住み慣れた地域の顔見知りの介護職員から「通い」「泊り」「訪問」のサービスを一貫して受けることができる安心感があります。
参考 小規模多機能型居宅介護とは|サービス内容・一日の流れ・メリット・デメリットを解説
夜間対応型訪問介護
通常の訪問介護ではカバーできない夜間帯に、ヘルパーが訪問し食事や排せつ・入浴等の介助、調理・洗濯・掃除などの生活支援を行います。
定期訪問と連絡を受けて対応する随時訪問があります。
定期巡回、随時対応型訪問介護看護
重度の要介護者の在宅生活を24時間支える仕組みとして、平成24年に創設された比較的新しいサービスです。
訪問介護と訪問介護の両方を、状況に応じて随時提供し、1日を通して定期的な見守りも行います。
介護保険サービスの支給限度額と自己負担額
介護保険サービスおもに、
- 在宅サービス
- 施設サービス
の2つのサービスに分けられています。
「在宅サービス」の支給限度額・自己負担額
在宅サービスは、要介護度に応じて「支給限度額」が決められており、支給限度額の範囲内のサービスについては負担割合証に記載されている1~3割を負担して利用することができ、残りは介護保険から支給されます。
一月あたりの支給限度額は、以下の通りです。
介護度 | 支給限度額 | 自己負担額 (1割) |
自己負担額 (2割) |
自己負担額 (3割) |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 | 15,009円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 | 31,419円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 | 50,076円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 | 58,848円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 | 80,793円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 | 92,418円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 | 108,195円 |
「施設サービス」の支給限度額・自己負担額
一方施設サービスには、支給限度額や自己負担という概念はありません。施設職員によって介護サービスが提供されるので、要介護度の基準にそって決められた料金を支払う定額制システムになっています。
そのため、利用する日数が多く自己負担が多く出てしまう場合では、「在宅サービス」よりも「施設サービス」の方が、自己負担金額が安くなる場合があります。
また、施設サービスでは利用する方の負担が重くならないように、さまざまな措置制度がありますので当てはまる方は必ず活用するようにしてください。
- 特定入居者介護サービス費
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算制度
おわりに
介護保険制度は、家族や自分自身が介護と関わる状況にならなければ、知る機会が少ないものですし、ふだん給与から天引きされている介護保険料が、どのように役立てられているか考えたことも無い、という人も多いでしょう。
しかし誰もがいずれ高齢者になるわけですから、未来の自分や家族のためにも知っておくことが、安心につながると思います。
今回の記事から国の制度を知ることで、それぞれの老後準備にも役立てていただきたいと思います。