ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは|入院中ヘルパー利用の実態を解説

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女性

ALSってどんな病気なの?

このように

  • ALS(筋萎縮性側索硬化症)について詳しく知りたい方
  • ALSが入院中ヘルパー利用ができるのかが知りたい方

など上記の方々はこの記事を読むことで解決できます。

介護の123編集部
介護の123編集部

この記事では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、ALSの症状、コミュニケーション方法、ALSの原因、治療法、ALSが自宅で生活する方法、2018年からALSの入院中のヘルパー利用が可能、ALSが入院中ヘルパー利用できなかった頃のデメリット、などについてわかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

ALS

ALSとは、筋萎縮性側索硬化症と呼ばれ、脳から体を動かすための運動ニューロンが侵害され全身の筋肉の委縮と筋力の低下をもたらす進行性の難病になります。

参考  難病・指定難病・特定疾患とは?簡単にわかりやすく解説

2014年にはアイス・バケツ・チャレンジでより多くの人にALSが認知されました。

ALSの意味は、

  • A(Amyotrophic:アミオトロフィック)筋肉が縮むこと(筋萎縮)
  • L(Lateral:ラテラール)側部を意味し、脳から下りてくる上位ニューロンの束(錐体路)が脊髄の左右の側面(側索という場所)
  • S(Sclerosis:スクレローシス)壊れたあとが硬くなって働かなくなってしまう

男女比では、1.3:1 と男性が少しだけ多いです。

年齢では、50代以降~70代までが多く30代半ばから発症が増えてきます。

  ALS患者数(2020年)
0~9歳 0人
10~19歳 1人
 20~29歳 20人
30~39歳 109人
40~49歳 542人
50~59歳 1,304人
60~69歳 2,622人
70~74歳 2,331人
75歳以上 3,585人
総数 10,514人

進行スピードは高齢の方ほど進行が速く、若い人ほど遅い傾向がありますが、個人差があるためすべての人が同じとは限りません。

出典 難病情報センター

ALSの症状

進行は人によりますが、とても早く発症から3~5年で自発呼吸ができなくなります。

ALSの初期では、以下の2パターンから始まる方が多いようです。

  1. 手足が動かしずらくなる
    ・ものがうまくつかめない
    ・足が前に出ない
    ・しゃがんだとき立ち上がりにくい
  2. 球麻痺
    ・ろれつが回りにくい
    ・ラ行やパ行がうまく発音できない
    ・しゃべりにくい
    ・鼻声になる
■比較的維持される機能
・知能の働き
・見る、聞く、触れる、嘆ぐ味わうなどの五感
・尿意・便意を感じることと排泄の機能
・目を動かす機能

出典 ラジカットによる筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療を受けられる患者さんとご家族の方へ

手足が動かしずらい、喋りずらいところから始まります。進行すると、全身が動かなく声が出せなくなり、さらに進むと自発呼吸ができなくなります。

自発呼吸ができなくなる前に、気管を切開し器官カニューレという管(喉に開けた穴を塞がらないようにするためのもの)を入れ、人工呼吸器を装着します。これにより安定した呼吸ができるようになりますが、意思疎通が困難になります。

気管カニューレ

ALSのコミュニケーション方法

人工呼吸器をつける前は声が出るので、言葉でコミュニケーションを取ります。

人工呼吸器装着後は、声が出しづらくなるため、以下のコミュニケーション方法を取ります。

口文字

口の形や瞬きなどの合図で伝えたい言葉を表現してそれを読み取ります
口文字

文字盤

50音が並んだ文字盤を使い、読み手と目と目を合わせることによって、視線で文字を1つ1つ確認して読み取ります
文字盤

パソコン支援ツール

パソコンと視線入力機器や意思伝達装置を使って、センサーが利用者の目の視線を読み取り、パソコンに表示されたあいうえお表やアルファベットを1秒ほど見つめることで文字が確定され入力ができるようになります
視線入力機器 意思伝達装置

ALSは、進行しても眼球を動かす筋肉は保たれるので、口が動かなくなっても目の瞬きを使ったコミュニケーションを取る方が多いです。

ALSの原因

ALSがなぜ発症するのか、その原因は依然としてまだ不明のまま、発症率は10万人に2人となっています。

仮説として

  • 遺伝子異常
  • 酸化ストレス
  • グルタミン酸過剰
  • 環境の問題
  • 神経栄養因子の欠乏

などが挙げられています。あくまで仮説であるため日々の研究に期待です。

ALSの治療法

ALSの治療法は現在はまだ確立されていません。進行を遅らせる・症状をやわらげるといった治療法が以下の2つになります。

  1. 薬物療法
  2. 対症療法

【1】薬物療法

【1-1】リルゾール薬

現時点では多くのエビデンスがあるリルゾール(リルテック)経口薬がALS治療薬として有効です。

リルゾールは、グルタミン酸による興奮毒性を抑制し神経細胞保護作用によりALSの進行を遅らせ生存期間を約2~3ヶ月延命効果があることがわかっています。

通常リルゾールは1日に50mgを2回(100mg)を内服投与します。

欧米の臨床試験では、1日に50mgよりも100mg、200mgの方が延命効果があり、さらに重症化してから飲むよりも、軽症のうちに飲む方が重症化までの進行が遅延された結果が出ています。

副作用は、50mgでは無いが、100mg以上からは嘔吐、嘔気、傾眠、しびれなどがみられています。

出典 日本神経学会(ALS治療ガイドライン)

【1-2】エダラボン

エダラボン(ラジカット)は点滴静脈注射も有効とされています。

エダラボンは体内の酸化ストレスを軽減させ運動神経の障害防止によりALSの進行を抑制させる効果があることがわかっています。

通常ラジカットは1日1回、60分かけて点滴で静注します。使用期間は14日以内になります。

副作用は国内臨床試験では、発疹4件(1,3%)、肝障害4件(1.3%)、高血圧3件(0,9%)、 Y-GTP上昇3件(0.9%)、尿中ブドウ糖陽性3件(0.9%)、などが確認されています。

出典 ラジカットによる筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療を受けられる患者さんとご家族の方へ

ドイツで患者738例を対象にエダラボン静注のコホート試験を実施したところ、エダラボン投与患者と標準治療患者のALS進行に差が無く抑制効果がみれなかったとのこと。

出典 medical tribune(ALSへのエダラボンの併用、効果示せず)

【2】対症療法

対症療法には、いくつかあります。

  • ALSの進行による身体の痛みや筋力低下を防止させるため、理学療法士やヘルパーによるリハビリ
  • 自宅で快適に過ごすため、福祉用具機器の導入
  • 不安や睡眠障害を防ぐため、睡眠安定剤の投与
  • 医師や看護師からの医療従事者へ、たん吸引や経管栄養など指導
  • 医師や看護師からの医療従事者へ、人工呼吸器やCPAPの使用方法の指導
  • 医師や看護師からの医療従事者へ、文字盤や口文字の指導

ALS患者を支援するため、ヘルパーや家族はさまざまな連携しながら自立した生活が送れるようにアプローチをしていきます。

ALSが自宅で生活する方法

重度訪問介護ヘルパーを利用する

ALSになった患者は居宅介護事業所などと契約をして自宅にヘルパーを派遣してもらいます。

この時、障害福祉サービスの重度訪問介護(身体・家事・移動といった総合的支援)と介護保険サービス、そして訪問看護サービス利用します。

重度訪問介護の支給時間数は各市町村によってまちまちなため、時間数が多いところですと1000時間を超えていたり、少ないところは400時間未満もあり地域格差が大きいです。

参考 重度訪問介護従事者養成研修とは

ヘルパーにたん吸引や経管栄養をしてもらう

ALSは、呼吸機能の低下に伴い排痰障害が起きるため、重度訪問介護等のヘルパーは喀痰吸引を行い排痰をします。

今までグレーゾーンだった介護職員による喀痰吸引が平成24年に制度化され、指定機関で喀痰吸引等研修を行えば、介護職員も喀痰吸引をできるようになりました。

参考  喀痰吸引等研修とは

2018年からALSの入院中のヘルパー利用が可能

厚生労働省はALSや脊椎損傷などの重度障害者の入院中ヘルパー利用の付き添いを解禁する方針を決め、障害者総合支援法改定案に見直しを組み入れ、2018年度に実現されました。

介護の123編集部
介護の123編集部

ALSなどの重度障害者が入院した場合、自分の身体のことを一番解っているのは在宅で支援している慣れたヘルパーたちです。心地の良い体位交換の角度、姿勢だったり、喀痰吸引のカテーテルの向きや角度、入れている秒単位の時間などは慣れたヘルパーしかわかりません。

こういった1つ1つの細かな点にも対応できる安心感が入院中はとても重要になってくると思います。

入院における厚生労働省の周知内容

厚生労働省の障害保健福祉部障害福祉課では、の入院における支援などにおいて以下のように示しています。

障害児者が新型コロナウイルスに感染し、入院が必要となる場合に、入院調整が円滑に進むよう、都道府県衛生部局と障害保健福祉部局が連携し、行動障害がある場合や医療的なケアが必要な場合など、障害児者各々の障害特性と必要な配慮を踏まえて、あらかじめ受入医療機関の検討を行うこと。

これら体制整備においては、障害特性ごとに受入医療機関の検討を行うことや、各都道府県調整本部等に障害特性に理解のある医師が参画するなどして受入医療機関の調整に当たっての意見を聴取することも重要である。

また、行動障害のある児者や重症心身障害児者等の特別な意思疎通支援が必要な者が患者である場合には、特に当該者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者によるコミュニケーション支援も重要である。このため、支援者の付き添いについても、衛生部局は障害保健福祉部局と連携し、医療機関に対して院内感染対策に十分留意しつつ、積極的に検討するよう促していただきたい。

なお、「特別なコミュニケーション支援が必要な障害者の入院における支援について」(平成 28 年6月 28 日付保医発 0628 第2号)により、看護に当たり、コミュニケーションに特別な技術が必要な障害を有する患者の入院において、入院前から支援を行っている等、当該患者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者が、当該患者の負担により、その入院中に付き添うことは差し支えないとされているところであり、これら取扱いについても、管下の医療機関へ周知いただきたい。

加えて、上記の障害特性に応じた配慮については、宿泊療養施設においても検討
いただきたい。

出典 厚生労働省「特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者に対する医療機関における対応について」

依然として改善されていないこと

しかし、ALSの入院時においては依然として以下のことが改善されていないのが現状です。

改善されていないこと
  1. ヘルパーが必要なのに入院できない病院がある
  2. 入院はできるがヘルパー利用ができない病院がある
  3. 入院時の利用ができない重度訪問介護事業所がある
介護の123編集部
介護の123編集部

全ての「病院」「重度訪問介護事業所」には、制度の理解を深めてもらいALS当事者一人一人の状況に応じて臨機応変に対応していただきたいと思います。

また各都道府県の自治体等も「病院」「重度訪問介護事業所」に制度の理解を周知していただきたいと思います。

出典 障害者一人暮らし支援会

ALSが入院中ヘルパー利用できなかった頃のデメリット

介護の123編集部
介護の123編集部

2018年以前までは、ALSを含めた重度障害者は入院中にヘルパー利用ができませんでした。その時のデメリットをいくつかあげてみたいと思います。

【デメリット①】意思疎通ができなくなってしまう

ALS患者が入院中にヘルパーを利用できないと様々な困難があります。まず、進行が進んだALS患者はコミュニケーションがまばたきしかできないため、口文字や文字盤を行えるスキルを持ったヘルパーしか理解できません。

看護師は理解できないためALS患者の意思をくみ取ることが非常に困難になり、誤った解釈をしてしまうケースもあります。そのため、一度入院をすると体力が落ち、症状が悪くなることも多いです。

【デメリット②】適切な介助が受けられず苦痛が生じる

意思が伝わらないことで、長時間体位交換ができず褥瘡ができたり、痛い思いをしなければいけません。また、ナースコールを自分で押せないので入院中は不安な日々が続くこともあります。

ヘルパーが利用できないと家族が支援することになり、本人だけでなく家族にも負担がありました。

【デメリット③】病院がALS患者を敬遠していた

ALSで自宅療養をしていても、急に体調を崩して入院をせざるえないときがあります。そんな時、入院できる病院を探してもなかなか見つからない場合が多いです。

理由は、ALSは長期入院になることが想定される点、進行が進んでいると全身がほとんど動かないため、看護に要する人員が他の患者に比べて多く必要になります。そうしたことから病院からは赤字、人手不足などによって経営が回らなくなるため敬遠されることもありました。

【デメリット④】サービスの重複により利用制限

入院中に看護師の人員がALS患者に取られるなら、なおさらヘルパーを入れた方が効率が良くなると思うのですが、これにも理由があります。

ALS患者が入院した場合、公的介護保険サービスの利用になります。さらに障害福祉サービスを利用することで税金を二重に利用することになるためヘルパーの利用が制限されていました。

そのため、入院中では、訪問介護事業所が実費でヘルパー派遣をしているところも少なくなく、支援に困難を極めていました。

おわりに

現在ALSは原因不明の病気で進行を遅らせることができますが、完治することはありません。

そのため、ALS患者は常に進行していく不安・恐怖と戦っています。支援している家族も大変です。

重度障害を持った難病患者たちがより安心して生活が送れるように「病院」「重度訪問介護事業所」などだけでなく、我々もALSについてもっと理解を深めて支えていける社会にすることが大切でしょう。

 

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