近年、少子高齢化に伴い、高齢者向けの施設が数多く増えてきました。その背景として高齢利用者が求めるニーズの多様性や公的施設の入所難から民間事業者参入によるサービスの臨機応変性などがあります。
老人ホームは大きく分けて2つあります。
- 社会福祉法人などが運営している公的老人福祉施設
- 民間の事業者が運営している民間の有料老人ホーム
その中でも種類が複数ありますので、サービス内容や入所条件、利用料金などをしっかり理解することが大切です。
公的老人ホームと民間有料老人ホームの違いとは?
公的老人ホームと民間老人ホームを比較してみました。
公的老人ホーム | 民間老人ホーム | |
運営 | 社会福祉法人など | 民間事業者 |
初期費用 | なし | 0~数千万円 |
月額費用 | 5~10万 | 10~20万円 |
入所期間 | 1年~10年以上 | 空き次第で入居可能 |
居室 | 相部屋・個室 | ほぼ個室 |
医療的ケア | ||
認知症 | ||
住み心地 |
一見すると公的老人ホームの方が料金が安いため良く見えがちですが、有料老人ホームは立地や設備、提供サービス、要介護度の条件などを自由に選ぶことができるため多少割高になっても自分に適した施設が見つかる可能性が高いです。
そして公的老人ホームは空きがないためだいたい5~10年待ちが多く、要介護状態になりすぐ入所したい場合などには対応していません。
有料老人ホームでは即入所できるところが多くあります。有料老人ホームの確認するポイントを押さえて自分に合った理想の施設を見つけましょう。
老人ホームの場所とサービスと価格
入居条件を絞り家族で話し合う
老人ホーム選びには「場所」「サービス」「価格」が重要になります。要介護者の場合は、子供や家族の家から近い老人ホーム、介護サービス付き、入居一時金が少ない、月額費用は17万円以内、など入居条件のポイントを絞り込んで探し始めると思います。
しかし、老人ホームごとに「介護サービスが手厚い」「医療ニーズにも対応」「部屋が広い」「介護サービスがあり低額」などセールスポイントは違ってきます。
ですからどのようなポイントに重点を置くのかを、事前に家族内で話し合っておくことが大切です。
同時に老人ホームへの転居で、新しい生活に対する不安も大きくなりますから、トラブルやリスクから目を逸らさずに、入居にあたっての不安を整理しておくことも大切です。
老人ホームを探す期間は余裕を持つ
老人ホームを漠然と決めてしまうとトラブルのもとになる
大抵の人は老人ホームを探す時は急いでいます。その理由として
- 突然、家族が骨折や脳梗塞などにより介護が必要になった
- 入院していた病院から早期退院を促された
などが挙げられます。自宅で介護できない場合は老人ホームを急遽探さなければいけなくなり、不安や焦りが出てきます。そうした中で漠然と下調べもせずに老人ホームを決めてしまうと、後々トラブルや様々な問題が出てきます。
老人ホームは一度契約をしてしまうと高額な買い物であるため、すぐに解約や退去をすることができません。失敗しないためにもまずは、どのような老人ホームがあるのか、老人ホームの違いなど、必要な知識を余裕を持って得ておきましょう。
どうしても時間が無い場合は、下記に書いてある老人ホームの探し方を参考にして慎重に探してください。
家族の状態を理解しておく
有料老人ホームは、サービス内容や金額がホームにより様々です。そのため、介護が必要な家族がどのような状態でどんなサービスが必要なのかを理解しておくことが大事です。
理解しているつもりでも、短い期間で身体状況は大きく変わる場合があります。しっかり理解した上で家族の希望に最も合った老人ホームを選ぶことが安心できる生活に繋がります。
老人ホームの相談サイトで探す
インターネットを見ていると老人ホームの相談サイトがたくさん出てきます。しかし選んでいる方々から「たくさんあってどこがいいのかさっぱりわからない」という声をよく聞きます。
まず、老人ホームの相談サイトは大きく分けて2種類あります。
- プロの専門相談員が老人ホーム探しの相談~見学までサポートしてくれる
- 自分で選んだ複数の老人ホームの資料を自宅に一括で送ってくれる
どちらも必要に応じた用途があります。
1番目は、早急に老人ホームを探さなければいけない人に向いてます。資料請求して自分で選んでいる時間がない人にはぴったりです。プロの専門相談員が自分に合った老人ホームを選んでくれますので安心もできます。
2番目は、すぐに探さなくてもいいけど、近い将来の為に、老人ホームを調べておきたい人に向いてます。資料請求をすることで自宅でじっくり選ぶことができますので非常に便利です。
老人ホームごとにサービス内容や価格設定が大きく違います。そのため、最低でも3社の老人ホームを比較・検討して本人のニーズに沿ったところを見つけましょう。
老人ホーム探しのチェックポイントは以下になります。
1.特定施設入居者生活介護を受けているか
介護付き有料老人ホームの場合、指定介護保険特定施設と明記されてないと介護保険サービスが利用できないことがあります
2.終身介護の施設なのか
終身介護と謳っていても認知症の症状が悪くなった場合、退去させられることがあります
3.心身状態によって条件や料金が変わるのか
入所時よりも要介護度が高くなった場合、個室から多床室(相部屋)になることがあります
4.介護サービスは誰がやるのか
施設で働いている人が介護職員なのかパートなのか、または外部の職員なのかによって料金や介護サービスの質が違ってきます
5.料金体系について
入居一時金はあるのか?その他の費用は何があるのか?などを調べる。資料やHPに大雑把な料金しか書いていないところは直接確認する必要があります
6.24時間対応の時は誰がいるのか
施設内に常駐している人は介護職員だけなのか?医療従事者がいるのか?それによって夜間、医療的ケアが必要な場合、対応が変わってきます
無料の老人ホーム相談サイトで探す
当サイトが厳選した老人ホームの相談サイトがありますので、是非ご活用して最適な老人ホームを見つけてください。
老人ホームを見学する
出来る限り本人と一緒に見学に行く
気になった老人ホームが見つかったら、実際に見学に行きましょう。資料やパンフレットでは見えない条件、料金、職員の対応など見学により細かい部分まで確認する必要があります。
見学に行く際は、本人と家族で行くのが望ましいです。多くの目や耳で確認することで良い点悪い点を知ることができます。また気になった施設には納得するまで何度も見学に行き情報収集しましょう。
遠慮をしてすぐに決めてしまうと後悔してしまいますので、できる限り何でも質問をして疑問を無くしていきましょう。
妥協せずに自分に合った介護施設を探すこと
見学する際は、必ず3ヶ所以上見てください。1ヶ所目で良いと思っても、複数ヶ所を見学することで自分では気付かなかったことがわかります。
また最初に嫌だと思ったところは最後まで嫌な場合があります。妥協せずにしっかり考えて決めましょう。
老人ホームに体験宿泊する
メリット・デメリットを肌で感じてもらう
体験宿泊では、1日のスケジュール、介護サービスの内容、居室の使いやすさ、共用スペースの種類、食事、入浴などを体験して、不都合が無く生活していけるか確認しましょう。
要介護の家族が入所先を「どこでもいいよ」と言っていても入所したらアレが嫌だ、コレがあった方が良かったなどリクエストが出てくるものです。
そのため体験宿泊をすることで、本人がぼんやりしていたメリット・デメリットを肌で感じ自分で理解できますし、家族に伝えることもできます。
本人の性格や癖が見えてくる
例えば本人が「居室の清掃を1日3回は最低してほしい」と言えば、そんなこと気にする人だったんだ。そういえば家にいた時もそんなことあったか!など家族が見えなかった本人の性格や癖が見えてきます。
次探すところは「掃除しなくても綺麗な老人ホームを選んでみよう」などポイントがわかり探しやすくなりますので体験宿泊はおすすめです。
老人ホームを契約する前に
必ず見積もりを出してもらう
入居後に契約当初に説明してもらった費用と大きく違うことがよくあります。入居前に全費用を正しく説明してくれる老人ホームと、説明不足だったり金額を隠す老人ホームがあります。
例えば、食費、光熱費、オムツ代、パジャマ代、タオル代、レクリエーション費など、入居前には聞いていなかった費用がかかってくる場合があります。
これを防ぐためには、1日、1ヶ月、1年、5年、単位でどれくらいの費用がかかるのか見積りを出してもらいましょう。
入居一時金の有無を確認する
入居一時金の返還金がいくらになるのか計算してもらい、今は介護が必要なくても介護が必要になった場合の費用も算出してもらいましょう。
老人ホームによって入居一時金があるところとないところがあり、おおよそ3年で両方の金額が同じになります。結果として3年以上住むのであれば、入居一時金を支払う方が安くなります。
参考 老人ホームの入居一時金と償却期間を理解しトラブルを防ぐ
介護職員の態度から良し悪しが見えてくる
職員が元気に生き生き働けているかどうかは老人ホーム探しで大切な点です。
- 少ないギリギリの人数で働かされている
- 拘束時間が長く残業代が出ない
- 休みがほとんどなく休ませてくれない
- 上司からパワハラをされている
などが多いと職員の離職率が高くなります。離職率が高い老人ホームは、経営に問題があり、入居者は安心してサービスを受けることができず離れていきます。
そのような老人ホームはベテランの職員がいなく、勤続年数が少ない人しかいないのがほとんどです。本当に職員のことを考えている老人ホームは、働きやすい環境を常に取り入れ、職員1人1人の声を聞き入れ運営しています。
そうすることで仕事に責任感が生まれ、職場が明るくなり、入居者も明るく楽しく安心して生活することができるようになります。
重要事項説明書にて職員の離職率を確認してみてください。もし勤続年数が少ない人が多い場合は一つの指針として考えてみてください。
老人ホームの最終チェックリスト
見学、体験宿泊などをして気になった施設の情報が集まったところで、最後に以下のポイントをチェックしてください。
入居者やホーム内について
- 入居者の年齢層や要介護状態、男女比、空室が目立つ場合は要注意
- 食事のメニューの充実度、食事は口に合うかどうか
- 居室内の印象(バリアフリー、広さ、雰囲気、明るさなど)
- 共用スペースの設備(売店、リハビリ訓練、ゲストルームなど)
- 体験入居の有無
職員や医療体制について
- 施設長の経歴、介護に対する考え方
- 職員の質や人間性、挨拶ができているか、支援する心があるかなど
- 職員体制(昼間と夜間の違い、夜間の看護師の配置の有無)
- 夜間や緊急時の対応方法(緊急時に医師が来てくれるのか、救急車対応か)
- 医療体制の充実度の高さ、医療的ケアはどこまで対応可能か(胃ろう、痰吸引、インスリン注射、在宅酸素、点滴など)
- 入院中も部屋は確保されるか(可能な場合、入院中の月額費用は?)
- 提携医療機関の具体的な内容と診療項目
- 訪問診療は受けられるのか(診療項目、訪問の頻度、費用)
契約内容や金額について
- 入居契約書、重要事項説明書、管理規定、決算書のチェック
- 契約形態(利用権契約、賃貸借契約など)
- 入居一時金の初期償却の割合(20〜30%が一般的。割合が高いと、退去時に戻る額が少なくなる)
- 入居一時金の償却期間と償却方法は均等か変動か(「ケア付き」の場合は5年程度が一般的)
- 入居一時金の保全措置の有無とその方法
- 月額費用の内訳
- 介護保険の対象になる費用と介護保険外費用の内容
退去について
- クーリングオフの有無(契約締結日から90日以内に解除する場合に前払金の金額が返還されるのか)
- 退去する場合の返還額
- 退去要件(重度化や認知症が進行しても住み続けられるか、過去の退去例と人数)
おわりに
いかがでしたか?老人ホームは公的と民間で費用や居心地の良さ、入居状況など違ってきます。ご家族の健康状態に合わせて、妥協せず上記の最終チェックリストをもとにしっかり選んでください。
家族にとっては第2の家になりますので、ストレスがない環境を一番に考えてあげ、可能であれば一緒に資料を見たり見学に行き決めましょう。