睡眠不足から認知症になるって聞いたけど本当かな?
このように
- 認知症にならないための良質な睡眠について詳しく知りたい
- 最近睡眠不足で困っている
など上記の方々はこの記事を読むことで解決できます。
この記事では、レム睡眠・ノンレム睡眠とは、世界と比較した日本人の睡眠時間、睡眠と脳の関係、睡眠不足・睡眠障害が身体に与える5つの影響、寝すぎが身体に与える3つの影響、質の良い睡眠を取るための7つのポイント、などについてわかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
65歳以上の高齢者は、予備軍を含めると4人に1人が認知症だと言われていることをご存知ですか?超高齢化社会と呼ばれる現代の日本では、認知症患者の増加は一つの社会問題となっています。
そんな認知症ですが、近年では様々な研究によって、認知機能の低下には加齢だけではなく日ごろの生活習慣が密接に関わっていることが分かってきました。
中でも、「睡眠の質」は直接的に脳へ影響を与えることから、認知症発症に大きく関わると考えられています。
レム睡眠・ノンレム睡眠とは
毎日を健康で元気に過ごすためには、質の高い睡眠を取ることがとても大切です。そのためには「睡眠サイクル」を意識した睡眠を取ることが重要となってきます。
睡眠には、
- レム睡眠
- ノンレム睡眠
の2つの状態があります。
これらの睡眠は、それぞれに異なる特徴や役割を持ち、一晩の睡眠中に交互に繰り返されます。
それでは、レム睡眠とノンレム睡眠の仕組みについて解説をしていきましょう。
レム睡眠(REM sleep)
REMとは「Rapid Eye Movement」の略語で、「急速眼球運動」という意味です。急速眼球運動とは、閉じた瞼の下で眼球が小刻みに動く運動のことで、レム睡眠時にはこの運動が確認できます。
また、レム睡眠は本来、睡眠中でも本能的に外敵から身を守るために発達した原始的な機能で、哺乳類や鳥類などの恒温性の高等脊椎動物にしか見られません。
ノンレム睡眠(Non-REM sleep)
ノンレム睡眠とは、急速眼球運動を伴わない睡眠のことで「深い眠り」とも呼ばれ、身体だけではなく、脳が休息している状態です。
脳は毎日の活動で疲弊するので、生命維持のためにもこの睡眠は非常に重要な役割を果たしています。
そのため、大脳の働きが弱まり、休息をさせることとなるのです。
また、ノンレム睡眠には4つの段階があります。
- 段階1:声をかければすぐに目覚める程度の浅い眠り。
- 段階2:耳から入る音を感じ取れる程度の眠り。
- 段階3・4:大声で呼び掛けたり、身体を揺さぶらないと目覚めない程度の深い眠り。
徐波睡眠や深睡眠期と呼ばれることもある。
このように、ノンレム睡眠の中にも浅い眠りと深い眠りが存在しています。
レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル
健常な成人であれば、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルは一晩で3~5回ほど繰り返されます。
レム睡眠とノンレム睡眠の1サイクルの時間は約70~110分と個人差がありますが、平均は90分程度です。1サイクルの割合としては、成人ではレム睡眠が20%、ノンレム睡眠は80%と言われています。
逆に、一晩の睡眠時間の後半となるにしたがって、レム睡眠やノンレム睡眠の段階1・2の状態になる割合が増えます。よって、この時に覚醒するとスムーズに起きることが出来ます。
世界と比較した日本人の睡眠時間
経済開発協力機構(OECD)の国際比較統計よると、日本は世界の国々に比べて国民の平均睡眠時間が短く、調査対象となった世界主要国の中でも、最も睡眠時間の短いワースト1の442分(7時間22分)という結果となっています。
グラフからも読み取れるように、睡眠時間が最も長い南アフリカ553分(9時間13分)と比べると約1時間50分ほど差があります。
国名 | 睡眠時間(分) |
日本 | 442分 |
韓国 | 461分 |
スウェーデン | 512分 |
アメリカ | 525分 |
中国 | 542分 |
南アフリカ | 553分 |
平成29年国民健康・栄養調査では、日本人の1日の睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性35.0%、女性33.4%となっています。
男性 | 女性 | |
5時間未満 | 7.5% | 9.2% |
5時間以上6時間未満 | 28.6% | 32.9% |
6時間以上7時間未満 | 35% | 33.4% |
7時間以上8時間未満 | 20% | 16.9% |
8時間以上9時間未満 | 6.7% | 5.5% |
9時間以上 | 2.3% | 2.1% |
出典 厚生労働省(平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要)
睡眠と脳の関係
睡眠とは、脳の活動、つまり生命の維持に不可欠な機能の一つです。私たちが眠っている間、脳では実に様々なことが行われています。
それでは、具体的に睡眠と脳にはどのような関係があるのかについて説明をしていきましょう。
脳を休養させる
睡眠が大切なのは、単に身体の疲れを取るためだけではありません。覚醒中、絶えず活動している脳(主に大脳)を休ませてメンテナンスをする必要があるのです。
十分な睡眠を取ることにより、次に目覚めた時に脳がより円滑に機能するようになります。逆に、睡眠不足や睡眠障害になると、だるさや眠気を感じるようになります。これは、脳が疲弊しているという重要なサインです。
成長ホルモンを分泌する
ノンレム睡眠の段階3・4が集中する入眠直後には、成長ホルモンの分泌が盛んになります。「寝る子は育つ」と言うように、成長ホルモンには新陳代謝を促す働きがあるので、子供の発育を促す作用があります。
成人になると、成長ホルモンの分泌は次第に少なくなり、その役割は新しい細胞の形成や傷・病気の治癒などといったアンチエイジング(抗老化作用)が主となっていきます。
セロトニンとメラトニンを分泌する
覚醒を促す作用を持つ物質に、セロトニンという神経伝達物質があります。セロトニンはホルモンの一種で幸せホルモンと呼ばれ心のバランスを整え、主に朝方に松果体(脳の一部)から分泌されます。
そして、夜間になるとセロトニンの分泌量は減り、松果体ではセロトニンから派生してメラトニンという物質が生成・分泌されるようになります。
このメラトニンというのが、睡眠誘導作用を持つホルモンで、セロトニンとは相互作用を持ちながら互いに対となる働きをします。質の高い活動と睡眠を取るためには、この2つのホルモンの分泌がしっかりと行われる必要があります。
自律神経のバランスを整える
身体には、血液循環や消化などの自分の意思とは無関係に働くさまざまな生命維持機能があります。自律神経とは、その名の通り、それら全てを自律して維持・調整を行っていく神経のことです。
自律神経には、
- 交感神経
脳が活動中に優位に働く神経 - 副交感神経
脳が休息中(ノンレム睡眠)に優位に働く神経
という互いに相反する作用を持つ神経があり、これらは日々互いのバランスを保ちながら機能しています。
これらの神経は「睡眠」と非常に密接な関係にあり、活動と休息のバランスが乱れた状態が続くと、交感神経と副交感神経のバランスも簡単に崩れてしまうのです。
自律神経が乱れると様々な症状が現れますが、身体的な症状としては慢性的な疲労感やだるさ、めまい、偏頭痛、不眠、便秘・下痢などがあり、精神的な症状としてはイライラや不安感、落ち込み、憂鬱(ゆううつ)などがあります。
免疫力のコントロールをする
上記でも述べたように、睡眠中は副交感神経が活発に働きます。逆に、活動中や緊張・興奮した状態になると交感神経が優位になります。
つまり、睡眠不足や睡眠障害になると、副交感神経が働く時間が短くなるだけではなく、疲労やストレスの蓄積によって過度な緊張状態に陥るので、本来は副交感神経が優位にならなければいけない時まで交感神経が過剰に機能してしまいます。
しかし、だからと言って睡眠もたくさん取ればいいというわけではありません。寝すぎて副交感神経が優位な状態が続くと、リンパ球(白血球の成分の一種であり、免疫作用を持つ)が過剰に分泌されて免疫力を必要以上に強くしてしまうので、アレルギー発症に繋がることがあります。
睡眠不足・睡眠障害が身体に与える5つの影響
睡眠不足や睡眠障害は、身体に様々な悪影響を与えます。それでは、具体的にどのような健康障害が生じるのかについて解説をしていきましょう。
【1】アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の主要な発症要因の一つに、アミロイドβペプチドという物質があります。
アミロイドβペプチドとは、脳が活動した時に生成される老廃物の一種で、この物質が脳に蓄積することで老人斑が形成され、アルツハイマー型認知症を発症する恐れがあると考えられています。
しかし、睡眠(特にノンレム睡眠)には、このアミロイドβペプチドを含む様々な老廃物を脳内から排出する機能があります。
厳密には、覚醒時でも老廃物の排出は行われていますが、ノンレム睡眠の状態になることで僅かに脳実質の体積が縮小し、細胞同士の間に隙間が生じて脳脊髄液の流出量が増加するので、脳内の老廃物の排出が覚醒時の倍程度になるためです。
したがって、睡眠不足や睡眠障害はアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めると言えます。
参考 軽度認知障害(MCI)の症状・原因・治療法をチェックし改善させる
【2】若年性認知症
若年性認知症とは、65歳未満の人が発症する認知症の総称です。若年性認知症の患者の多くはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症であり、年齢層としては40代~60代前半、性別としては男性の発症ケースが多い傾向にあります。
認知症の発症の要因はまだまだ未解明な部分も多いですが、上記でも述べたように、近年は様々な研究によって認知症と睡眠に大きな関係があることが明らかとなってきました。
また、脳血管性認知症の発症要因である生活習慣病(肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症)もまた、十分な睡眠が確保できないことによって誘発される健康障害の1つです。このように、若くても認知症を引き起こすリスクは十分にあり、日常的にしっかりと睡眠を取ることがとても大切になります。
参考 若年性認知症(若年性アルツハイマー)とは|初期症状・なりやすい人を解説
【3】循環器不全
睡眠不足や睡眠障害となると、ストレスが溜まって交感神経が優位になります。
このような状態を防ぐためにも、毎日の適度な睡眠はとても重要な役割を果たしていることが分かります。
【4】肥満
睡眠中は成長ホルモンが分泌されて新陳代謝が促されたり、副交感神経が優位になることによって消化器系が活発に働くようになります。
つまり、私たちが日中に摂取したものを利用可能なエネルギーへと変換するプロセスが適切に機能するためには、睡眠は非常に重要であることが分かります。
【5】うつ病
睡眠不足や睡眠障害になると、うつ病になる可能性が高くなると言われています。これは、睡眠不足によってセロトニンという物質の分泌が減少するためです。
セロトニンとは身体の覚醒を促すホルモンで、主に朝方に分泌が盛んになります。そして、通常であれば、夜間になるとセロトニンの分泌量は減り、セロトニンからメラトニンというホルモンが作られるようになります。
また、セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれることがあり、楽しい気持ちや嬉しい気持ちを感じると分泌が盛んになる特徴があります。
つまり、適度に楽しい気持ちを感じることの出来るようなメリハリのある生活を送ることにより、これらのホルモンがしっかりと機能するというわけです。
しかし、睡眠不足や睡眠障害を招くような生活をしていると、これらのホルモンバランスが乱れてしまいます。結果的に、セロトニンの分泌が悪くなり、うつ病になるリスクを高めてしまうのです。
寝すぎが身体に与える3つの影響
身体を健康に保つために必要不可欠な睡眠ですが、寝すぎもまた睡眠不足と同じくらい身体に悪影響を与えると言われています。
つまり、何事も適度が一番というわけです。それでは、寝すぎることでどのような健康障害が生じるのかについて解説していきます。
【1】脳が老化する
睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の異なる2つの睡眠状態から成り立っています。
睡眠時間が適切な場合、睡眠の前半にはノンレム睡眠が、後半にはレム睡眠が多く出現し、両者は一晩の睡眠でバランスを取りながら機能します。
しかし、睡眠時間が長すぎるとレム睡眠が必要以上に出現して睡眠のバランスが崩れてしまいます。ノンレム睡眠は脳(主に大脳)を休息させる機能を持ちますが、レム睡眠中の大脳は覚醒時以上に活発に働いているので、レム睡眠の時間が増えると脳が十分な休息を取ることが出来なくなってしまうのです。
また、長時間にわたって体を動かさないことにより、全身の血液循環が悪くなり、十分な栄養や酵素が脳に行き渡らなくなる恐れもあります。
【2】自律神経のバランスが崩れる
これまでも何度か説明をしてきたように、活動と休息によってバランスが保たれている自律神経は、睡眠不足や睡眠障害だけではなく、睡眠の取りすぎでもバランスを崩す恐れがあります。
睡眠時に働く副交感神経が優位な状態が続くと、慢性的なだるさや疲労感、眠気、偏頭痛、思考力の低下などの身体的な症状に加え、気分の落ち込みや自己肯定感の低下などの精神的な症状が現れやすくなります。
また、免疫力を高めるリンパ球の分泌が過剰となり、アレルギー症状を引き起こしやすくなります。
【3】心疾患を発症
睡眠を取る時間が長いと、その分身体を動かす頻度も少なくなり、全身の血液循環が悪くなるためであることが考えられます。
また、血液循環が悪くなることによって老廃物の排出が滞ったり、新陳代謝が落ちるので、肥満となるリスクも高くなる恐れがあります。
質の良い睡眠を取るための7つのポイント
これまで、睡眠の大切さについて紹介してきましたが、実際に質の高い睡眠を取るためにはどのようにしたらよいのでしょうか?
それでは、具体的な方法について紹介をしていきたいと思います。
【ポイント①】規則正しい生活を心がける
規則正しい生活が健康維持の基本であることは周知の事実ですが、実際に日常的に実践できている人はどのくらいいるのでしょうか。
中には、仕事上で夜勤などがあって不規則な生活を余儀なくされている人も多くいるかと思います。しかし、そんな中でも、朝起きる時間を統一したり睡眠時間を決めるなど、自分の生活スタイルに合わせて生活サイクルを整えることが大切です。
それにより、睡眠サイクルが安定します。出来る限りでもいいので、一度自分の生活スタイルを見直してみてはいかがでしょうか。
【ポイント②】活動と休息にメリハリをつける
しっかりとした睡眠を確保するためには、セロトニン(覚醒を促すホルモン)とメラトニン(休息を促すホルモン)を脳から十分に分泌させる必要があります。
ですから、朝起きたらまずは日光を浴びるようにしたり、日中は出来るだけ横になったり昼寝をしすぎないようにしたり、決まった時間に寝たりするということがとても大切です。
また、就寝前にテレビやスマートフォンの光を浴びるとメラトニンの分泌の妨げとなります。ですから、このような光を発するスマホなどはできれば就寝3時間前から控えることが最適だと言われています。そして就寝時も、出来るだけ周囲を暗くして眠るようにすると尚良いでしょう。
【ポイント③】食生活を見直す
朝食
あなたは朝食を毎朝しっかりと摂っていますか?朝食は、単にエネルギー源であるだけではなく、体温を上げて身体を目覚めさせる大事な役割を担っています。
夕食
夕食は就寝3時間前には済ませるのが最適です。就寝前に食事をしてしまうと、身体は消火活動を優先させるので、臓器が休息する時間を十分に確保できなくなってしまいます。因みに、夕食はタンパク質をメインとした食事がオススメです。
一日を通して疲弊した身体の細胞の修復をすると同時に、セロトニン生成の原料となります。セロトニンの原料であるトリプトファンは、体内では生成できない必須アミノ酸の一つで、取り入れるためには食事から摂取する必要があるのです。
このように、日々の食事もまた睡眠と非常に密な関係にあります。
【ポイント④】体を温めてリラックスさせる
温かい飲み物を飲んだり、入浴をするなどして体を温めてリラックスさせましょう。体温が下がり始める時に自然な眠気が起きるので、就寝前のリズムを作るためにも効果的です。
ただし、身体を温め過ぎてしまうとむしろ覚醒を促してしまうので、適度に調整をする必要はあります。因みに、飲み物は白湯や生姜湯、ホットミルク、カモミールティーなどがオススメです。
【ポイント⑤】寝酒やカフェインを含む飲み物は避ける
寝酒は一時的に眠気を誘いますが、中途覚醒を引き起こしやすくなります。加えて、利尿作用を促してトイレに行く回数も増えるので、熟睡感を得られずに目覚めも悪くします。
また、コーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどのカフェインを含む飲み物も、覚醒作用を持つために入眠や熟睡の妨げとなります。ですから、これらの摂取は出来れば就寝前3~4時間前で留めておくことが最適です。
【ポイント⑥】自分に合った寝具選びをする
意外と見落としがちなのが、寝具選びです。枕の高さやベッドマット(敷布団)の硬さなど、自分の体形に合ったものを選ぶことは快適に睡眠を取るためにとても大切です。
また、就寝中は発汗作用も盛んになるので、吸水性や保湿性の優れたものを選ぶことも寝具選びのポイントの1つです。
【ポイント⑦】適度に運動をする
ウォーキングやジョギングなどの軽い全身運動には、身体の緊張を解きほぐす効果があります。
運動をするタイミングは就寝3時間前が最適ですが、特に社会人の方などはその時間に運動することが難しいという場合もあると思うので、自分の生活スタイルに合わせて運動を取り入れていくようにしましょう。
ただし、過度な運動はむしろ覚醒を促してしまうので注意が必要です。
参考 運動療法は認知症の予防に効く!効果のある体操や運動とは?
おわりに
日本は「不眠大国」と呼ばれるほど、十分な睡眠を確保できていない人が多い傾向にあるようです。認知症患者が増加する社会背景には、このような人々の生活が大きく関連していると考えられます。
睡眠は、健康な脳や体を維持するために必要不可欠な機能です。ぜひ皆さんも、一度自分の睡眠状態を見直してみてはいかがでしょうか。