認知症サポーターの養成講座を受けようと思っているので講座内容を知りたい
認知症サポーターの仕事内容や将来性を知りたい
上記のようにこれから認知症サポーターの資格を取得するにあたり詳しく知りたい方はこの記事を読むことで解決できます。
この記事では、認知症サポーターの仕事内容や将来性、転職先、養成講座の内容、メリットなどを詳しく解説しますのでぜひ参考にしてみてください。
認知症サポーターとは?
認知症サポーターとは特定非営利活動法人「地域ケア政策ネットワーク全国キャラバンメイト連絡協議会」が実施する認知症サポーター養成講座を受講して無事修了した人がもらえる名称になります。
認知症サポーターは認知症の方を含めたすべての人が暮らしやすい地域づくりをするためのボランティアです。
講座を受けることで認知症について正しい知識をもつことができ、認知症の人や家族を取り巻く人々を温かく見守り、できる範囲で手助けをしたり、よき理解者になって支援することができるようになります。
例えば仕事中で、たまたま認知症で困っている人を見かけたときに、「大丈夫ですか?」「お困りですか?」といった声をかけるといった行いをすることが推奨されるようにあるということです。それ以外にも気になる高齢者がいた場合は民生委員に報告する必要も出てきます。
さまざまな人が認知症サポーターとして活動
2016年12月までに849万人以上の方々が講座に参加し、認知症サポーターになりました。地域住民、金融機関や商店・スーパー・コンビニ・銀行などの従業員、小・中・高等学校の生徒など様々な方が受講している資格になります。
他にも警視庁では、すべての警察官と職員計約46,000人を対象に認知症サポーター養成講座の受講を義務化するといった発表を出しており、世の中を少しずつ良い方向に導こうとする活動の一環となっています。
認知症サポーターの証
画像出典:埼玉県鶴ヶ島市
認知症サポーターが誕生した経緯
「痴呆」から「認知症」へ変わった
もともと日本では物忘れが多かったりすると「痴呆症」や「ぼけ」になったなどと呼ばれていました。しかし、痴呆症の「痴」は「愚か」、「呆」は「のろま」や「ぼんやりした状態」など偏見や侮蔑的な言葉を意味し、尊厳や尊敬の念がなく、病気自体を理解していませんでした。
そのため、認知症対策である早期発見・早期診断等の支障となっていたのです。そこで、日本政府は2004年12月に「痴呆」を廃止し、「認知機能が低下する疾患」を意味する「認知症」に変更しました。
これに伴い、メディアや学術団体も「認知症」を使うようになり、認知症は誰にでも起こりうる脳の病気であり、恥ずかしいことではなく、対策によっては改善・予防することも可能な病気であると広く認識されるようになってきました。
認知症サポーター100万人キャラバンが発足
日本政府は2005年に、認知症に対する意識と理解を改善するため、「認知症サポーター100万人キャラバン」を10年間の国家キャンペーンとして立ち上げました。
このキャンペーンでは、認知症の正しい理解と認知症になっても悲観的にならず自分らしく、安心して暮らしていける町づくりの普及活動を行いました。さらに全国各地で認知症に対する専門的な講座が開かれ、認知症サポーターが誕生しました。
認知症サポーターには小学生から警官までさまざまな人がなっています。そのおかげで今では「痴呆症」という言葉が無くなり「認知症」が日本で広く用いられ、国民1人1人の理解度も深まり、偏見が減ってきています。
認知症サポーター5つの仕事内容
認知症に関して正しい知識や理解を深め、各自ができる範囲で認知症の方やその家族のサポートなどを行います。
認知症サポーターは、認知症の方が安心して暮らせる街づくりや、以下の5つの項目が期待されています。
【1】認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない
認知症と聞いてなんとなく説明はできても、正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。
対応の仕方がわからない
何もしてあげられない
などと初めから決めつけたり、認知症に対して偏見を持つ方も少なくないようです。
認知症のタイプによっては現れる症状も違いますので、知識や理解を深めることで自身の将来にも役立てることができるでしょう。
日本では高齢化が進み、認知症の方も増え続けていますので、一人でも多くの人が正しく認知症を理解することはとても大切です。
【2】認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
認知症の方やその家族は、周りに迷惑をかけたくないという思いから外出を避けることも多いようです。
ジロジロと見られたり、心無い言葉をかけられたり、そんな辛い思いをすることでますます委縮してしまい、普通に生活することですら難しくなってしまいます。
認知症の知識を少しでも身につけておけば、応援者として認知症の方やその家族を温かい目で見守ってあげることができるでしょう。
【3】近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
認知症サポーターだからといって特別なことをするわけではありません。
- 声をかけたり、困っていれば話を聞く
- 道に迷っていたら案内をする
など誰にでもできる簡単なことから行ってみましょう。
近隣に認知症の方がいれば毎日挨拶をする、さりげなく見守る、それだけでも本人やその家族にとっては嬉しいことかもしれません。周囲の人と、また地域ぐるみで積極的に関わろうという意識が大切です。
【4】地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる
認知症サポーター同士や同じ価値観を持つ人とつながりを持てば、ネットワークができ情報を共有したり、新しい知識を学んだりすることもできます。
困ったときに助けてくれる人が一人でも増えることは、認知症の方を見守るうえで大きな力になります。介護は身体面・精神面での負担も多く、悩みを抱え込んでしまいがちです。
地域ぐるみで見守ることができれば、安心して暮らせるようになったり、本人やご家族の負担の軽減にも繋がるでしょう。
【5】まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する
高齢者の数が増えている現代では、認知症だけではなく様々な理由で生活に支障をきたしている方もたくさんいます。
すべての方に手を差し伸べることは難しいですが、まずは認知症サポーターとしてできることから行ってみましょう。
正しい知識を広めたり、地域での交流に参加してみたり、積極的に活動に取り組むことで自信ややりがいにも繋がります。
認知症サポーターのメリット3つ
【メリット①】認知症の知識が身につく
認知症サポーターは、正しい知識と理解を持ち、認知症の方とその家族を支える活動について学びます。
受講時間90分で資格取得できるため、深い知識を学ぶわけではありませんが、認知症についてのアドバイスをしたり、相談に乗ったりなど、支援を必要としている方にできる範囲で手助けができるようになります。
日常生活の中で認知症の方への偏見を持たず、さりげなく支援することが大切です。
【メリット②】地域のために働ける
認知症サポーターが増えることでネットワークができ、協力や連携が取れたり、様々な情報を共有できるようになります。
認知症に対する理解がある人が増えることは地域での見守りにもなり、何かあったときに助けてもらえたり、気軽に相談できたりと、暮らしやすくなります。
介護は施設や家族だけでは困難な場合もあり、そんな時には認知症サポーターとしてできる範囲でサポートしてみましょう。
【メリット③】将来役立てることができる
高齢化が進み認知症の方が増える中、自身の大切な家族もいつそうなってしまうかわかりません。突然の出来事でどうしていいかわからなくなる方も多いでしょう。
もし少しでも認知症に関しての正しい知識と理解を持っていれば、落ち着いて行動することができるようになります。
認知症サポーターは介護において必ずしも必要な資格というわけではありませんが、学ぶことは将来きっと役立つでしょう。
認知症サポーターの将来性
認知症の人にとって必要不可欠な担い手
厚生労働省の調べでは、2025年までに認知症高齢者の数が320万人を超えると推計されており、今後、認知症の方への支援がますます必要不可欠になることが予想されます。
また、高齢者の数に対して支援をする介護者の数が年々足りなくなってきてます。この背景には、低賃金、重労働、劣悪な職場環境などが挙げられます。
そのため、ボランティアとして動ける認知症サポーターが今後より重要な存在になることが想定されており、これからの世の中で認知症の人たちが少しでも生きやすい世の中をつくる担い手になることができるでしょう。
就職や転職に有利になる?
認知症サポーターはあくまで認知症の方を手助けするボランティアであり、転職や就職に役立てることが主目的ではありませんが、認知症に理解ある者として就業場所によっては優遇される場合があります。
もし認知症に対してのスペシャリストになりたい、と考えている方は「認知症ケア専門士」といった認知症に対しての深い知識を保有できる資格を取得するとよいでしょう。ただしこちらは受験資格に現場経験が必要になります。
参考 認知症ケア専門士とは?受験資格・合格率・給料・仕事内容・メリットを解説
認知症サポーターの養成講座
認知症サポーターの養成講座を受けるには?
認知症サポーター養成講座の受講を希望される方は、最寄りの自治体や事務局へ連絡してみてください。
養成講座の概要について
それでは養成講座の内容について触れていきましょう。試験日や試験会場についても説明します。
実施主体者 | 都道府県、市町村、全国的な職域団体・企業など 全国キャラバン・メイト連絡協議会 |
講師 | キャラバン・メイト |
対象者 | 地域住民、職域、学校、広域の団体・企業等の従事者など |
受講料 | 無料 |
受講時間 | 1時間30分 |
受講内容 | ◆認知症サポーター100 万人キャラバンとは ◆認知症を理解する(1) 1 認知症とはどういうものか 2 認知症の症状 3 中核症状 症状1 記憶障害 症状2 見当識障害 症状3 理解・判断力の障害 症状4 実行機能障害 症状5 感情表現の変化 4 周辺症状とその支援 元気がなくなり、引っ込み思案になることがある 身のまわりのことに支障が起こってくる 周辺の人が疲弊する精神症状 行動障害への理解 ◆認知症を理解する(2) 5 認知症の診断・治療 早期診断、早期治療が大事なわけ 認知症の治療 認知症の経過と専門家との関係 成年後見制度/地域福祉権利擁護事業 6 認知症の予防についての考え方 7 認知症の人と接するときの心がまえ 8 認知症介護をしている人の気持ちを理解する ◆認知症サポーターとは ◆認知症サポーターのできること |
修了証 | 受講者全員にオレンジリングが貰えます |
認知症サポーターキャラバン
全国キャラバン・メイト連絡協議会では、自治体や全国規模の企業・団体等と協催で認知症サポーター養成講座の講師役(キャラバン・メイト)を養成しています。
キャラバン・メイトとは?
地域のリーダーとして期待される存在
キャラバン・メイトとは、自治体や事務局などと共同して認知症サポーターを養成する「認知症サポーター養成講座」を企画・開催・講師を務めたり、住民からの相談に乗ったり、関係機関との連携などを通し地域のリーダー役となる役割の人になります。2021年9月までで169,708人が修了されました。
キャラバン・メイトは、地域のリーダーとして「認知症の方が安心して暮らせる町づくり」を目指し、関係機関などと連携し、認知症の方々の担い手となることを期待されています。
対象者別の修了人数
実に幅広い方々がキャラバン・メイトとして活躍されています。
認知症介護指導者 養成研修修了者 |
1,727人 |
認知症介護実践 リーダー研修修了者 |
7,815人 |
介護相談員 | 3,981人 |
認知症の人を 対象とする家族の会 |
1,952 人 |
行政職員 (保健師、一般職等) |
14,853人 |
地域包括 支援センター職員 |
28,403人 |
介護従事者 (ケアマネジャー、施設職員等) |
38,337人 |
医療従事者 (医師、看護師等) |
5,962人 |
民生児童委員 | 4,464人 |
その他(ボランティア等) | 15,854人 |
キャラバン・メイト養成研修
養成研修の概要について
認知症サポーターではなくそれを要請する立場になりたい場合は、所定のキャラバン・メイト養成研修を受講する必要があります。2016年12月までで1,917回も開催されました。
キャラバン・メイト養成研修は各都道府県における自治体や企業団体によって定期的に開催されているようなので、希望すれば受けることができるでしょう。
実施主体者 | 都道府県、市町村、全国的な職域団体・企業など |
目的 | 地域で暮らす認知症の人やその家族を応援する「認知症サポーター」をつくる 「認知症サポーター養成講座」の講師役「キャラバン・メイト」を養成する。 |
対象者 | 次の要件を満たす者で、年間 10 回程度を目安に(最低実施数 3 回)、 「認知症 サポーター養成講座」を原則としてボランティアの立場で行える者。 1. 認知症介護指導者養成研修修了者 2. 認知症介護実践リーダー研修(認知症介護実務者研修専門課程)修了者 3. 介護相談員 4. 認知症の人を対象とする家族の会 5. 上記に準ずると自治体等が認めた者 5-1 行政職員(保健師、一般職等) 5-2 地域包括支援センター職員 5-3 介護従事者(ケアマネジャー、施設職員、在宅介護職員等) 5-4 医療従事者(医師、看護師等) 5-5 民生児童委員 5-6 その他(ボランティア等) |
受講料 | 無料 |
受講時間 | 6時間 |
修了証 | 受講者全員にオレンジリングが貰えます |
養成研修のカリキュラム
養成研修のカリキュラムのパターンは実施主体によって異なりますので以下は一例になります。
内容 | 内容 | 目的 | 標準時間 |
1オリエンテーション | 1 研修主催自治体のキャラバン事業の取り組みについて 2 キャンペーンビデオ (15分) 3 認知症サポーターキャラバンとは 4 研修のねらい |
①キャラバン、事業展開の趣旨を理解する。 ②自治体としての事業の位置づけの理解徹底。 |
30分 |
2認知症サポーターに 伝えたいこと |
○認知症を理解する ・認知症とはどういうものか ・認知症の症状 ・中核症状 ・行動・心理症状とその支援 ・認知症の診断・治療 ・認知症予防についての考え方 ・認知症の人と接するときの心がまえ ・認知症介護をしている人の気持ちを理解する |
①認知症サポーター養成講座で サポーターに伝える内容について学習する。 ②認知症とはどういう病気なのか、 認知症の人や介護をしている人を どう支援したらよいのかを理解する。 |
120分 |
3認知症サポーター 養成講座の運営方法 |
1認知症の人を地域で支える グループワーク① こんなとき、どこにつなげたらいいのか ○地域ケアシステムで支える SOS便利帳をつくろう 地域包括支援センター、地域の社会資源をおさえる |
①認知症の人を地域で支える視点。 ②認知症の人の助けになる地域の 社会資源やネットワークをおさえる。 |
25分 |
2 キャラバン・メイトの役割と講座運営の実際 ○各地のサポーター講座の様子(適宜) |
全国各地の講座の模様をスライドで紹介。 (住民、職域、学校) チームオレンジ(2019年新規事業)の概要紹介。 |
20分 | |
○サポーター養成講座の企画・運営ポイント グループワーク② 講座の展開に協力してもらえそうな機関等は? (講座の開催先を考える) |
①キャラバン・メイトの役割の理解とサポー ター養成講座の対象者の検討。 ②サポーター養成講座を展開するうえで協力 してもらう機関の洗い出し。 ③グループワーク②③の中で、認知症サポー ターとしてできることを押さえる。 |
150分 | |
グループワーク③ | 受講者に合わせたカリキュラムをつくってみよう | ①サポーター養成講座の運営方法を確認する。 ②サポーター養成講座の企画や講座の ポイントについて理解する。 ③サポーター養成講座受講対象者別 カリキュラムの作成。 |
ー |
Ⅳ 事務連絡 | キャラバン・メイト登録について アンケート回収 オレンジリング・修了証 授与 |
ー | 15分 |